新たな研究では、6人の宇宙飛行士から採取した血漿中のcfRNAおよびcfDNAのサンプルを分析し、宇宙滞在中および地球帰還後の遺伝子の変化を調査しました。

主な発見として、宇宙滞在中にミトコンドリア内のDNAとRNAが増加しましたが、地球帰還後にはほぼ元に戻ることが確認されました。

また、RNAシーケンス解析(細胞中の全mRNAの塩基配列を解読)によって、宇宙滞在中に骨格筋や小脳に関連する遺伝子のRNAレベルが減少し、地球帰還後に回復する傾向が見られた一方で、ビタミンD受容体のシグナル伝達経路に関与する遺伝子も変動していました。

さらに、ミトコンドリア由来の構成成分が、血漿中に存在する細胞外小胞の中に保護されている可能性が示され、特にCD36抗体(CD36というタンパク質を検出するための抗体)と関連した細胞外小胞が宇宙滞在中に血流中に放出されていることが確認されました。

また、同由来のcfRNAは、脳や骨格筋、心筋など多様な組織に由来しており、宇宙滞在中にこれらの組織間の分子レベルでの変化を捉えることができたと結論付けられました。

これらの結果は、宇宙という新しい環境に適応して、人間の遺伝子の働き方が変化していることを示しています。

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Pre(飛行前)、 Flight(宇宙滞在時)、Post(地球帰還時)における生体変化の各傾向を示します。図Aは、地球帰還時には概ね飛行前の状態に戻ることを示しています。図Bと比べ、図Cでは宇宙滞在時にムチン遺伝子とミトコンドリア遺伝子の変化が確認できます。/ Credit : 村谷匡史ら, JAXA報告書(2023)

分子レベルでの人体への影響

宇宙での人体への影響に関する研究は、ますます解明されてきています。

NASAの双子研究や最近の宇宙飛行士14名に関する調査では、宇宙滞在中に血液中のミトコンドリア内にあるDNAが増加し、地球帰還後には元の状態に戻ることが確認されました。