1924年にパリに誕生したレストラン「プルニエ」は、100年に渡り、パリ屈指の魚介とカヴィアの専門店としてその名声を博してきた。

時はベル・エポック。オープン当初から、パリの社交界の人々やロシアの名門貴族たちに愛され、オスカー・ワイルド、ココ・シャネル、ジャン・コクトー、アーネスト・ヘミングウェイらの文化人も「プルニエ」の美しい空間と極上の魚介料理を愛した。

伝統を大切にする傍で、ロシア産カヴィアの輸入、グラスでのワイン&シャンパーニュの提供、フランス産養殖カヴィアの実現など、さまざまな”パリで初めて”となる革新も行い、パリジャンが憧れる華やかなイメージを持つ魚介専門高級レストラン、という立場を守り続けてきた。

この”伝統と革新”というエスプリは、2023年から、同店のメニュー開発をヤニック・アレノが手がけるようになったことにもよく現れている。

2023年から「プルニエ」のメニューを手がける、フランス料理界のトップシェフ、ヤニック・アレノ

アレノは、フランス国内で唯一、パリの「アレノ・パリ」と、アルプス地方のリゾート地クールシュヴェルに建つラグジュアリーホテル「シュヴァル・ブラン」内のレストラン「ル・1947」、2軒のレストランでミシュラン3つ星の評価を得る、現在のフランス料理界のトップに立つ料理人。

伝統技術に長けた上で、フランス料理の肝であるソースを長年研究し、抽出や発酵といった技術を駆使して創る、奥深い風味と軽やかさを併せ持つ”現代のソース”を披露している。

そんな彼の感性は、「プルニエ」の名物料理である”クリスチャン・ディオールの卵”によく現れている。

ポーチド・エッグ、ハム風味のジュレ、生クリーム、そしてカヴィア。シンプルかつ洗練されたおいしさ

ポーチド・エッグをコンソメジュレに包み、カヴィアを添えた一品。実は、この料理は、はじめ、カヴィアが添えられていなかった。この店の常連だったクリスチャン・ディオールがイヴ=サン・ローランと一緒に食事をしていた時、サン・ローランが、”カヴィアを乗せた方がよりおいしくなりますよ”と提案して、完成した作品なのだ。