よって今回の日鉄のケースは政争の具とされる可能性が高いのです。では、バイデン氏はどう見ているのかというと2月2日に組合がバイデン大統領からpersonal assurances(個人保証)を貰ったと発表しています。ただし、この個人保証が何を意味しているのか、バイデン氏も買収阻止に走るのか、労働者の雇用を守ると言っているのか判断できない状態です。

ではお前ならどうするかと聞かれれば、私が社長なら以下の戦略を取ります。

USスチールと鉄鋼業界の組合に日鉄が雇用の確約を入れ、今回の買収が平和的であること。また長期的にUSスチール、ひいてはアメリカ鉄鋼業界に最新の技術をもらたし、アメリカ自動車業界などの長期繁栄につながると申し入れ、組合とコミュニティラインを作り上げること バイデン氏の個人保証を担保し、バイデン氏の顔を潰さないことを条件に買収審査を速やかに進めてもらうようバイデン氏に伝えるとともに議員へのロビー活動を継続すること 岸田首相の4月のアメリカ公式訪問の際に岸田氏からバイデン氏へ働きかけをしてもらうこと トランプ氏へ書簡を送り、トランプの政争の具にさせないこと バックアッププランとしてUSスチールの持ち株会社への移行を検討し、日鉄がUSスチールの直接のオーナーではなく、持ち株会社を通じた所有形態にしてアメリカ人の感情を和らげる策を念のため検討すること 橋本社長自身がアメリカで直接交渉に臨むこと

サラサラ書きましたが、なかなかこれは大変な作業なのです。ただ、橋本/今井体制なら強力であり、可能だろうと思います。むしろこの話が大統領選で潰された、というのは禍根を残すことになります。その為にも一企業同士の話ではなく、政府間のサポートを期待したいところです。岸田さんもアメリカに飯を食いに行くだけではなく、お国のために汗をかいてもらいたいところです。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年2月8日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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