血液型はウイルスや細菌に立ち向かうためにうまれた
A型とB型の血液型に対する抗体が生まれたときから存在するのは、私たちの環境が影響しています。
具体的には、私たちが普段接する食べ物や、体内に存在する細菌、ウイルスなどが含む糖構造が、A抗原やB抗原に似ているためです。
このため、免疫システムはこれら糖構造に反応して自然に抗体(IgM抗体)を作り出します。
そしてこの抗体が赤血球のA抗原やB抗原をウイルスや細菌の断片と勘違いして反応してしまいます。
輸血技術が用いられるようになったのは人類史全体では極めて最近であるため、仕方がないのかもしれません。
一方、異なる抗原や抗体が存在するのは、多様なウイルスや細菌に対して免疫能力の多様性を持たせるための進化の結果だと考えられます。
これまでの研究によっても、血液型の分布が歴史的に特定の地域で発生した伝染病との関連が報告されており、血液型が感染症に対する感受性や重症度に影響を与えることを示唆しています。
特に、マラリアはO型血液の分布に大きな影響を与えたとされています。マラリア原虫は赤血球を感染経路として利用し、A型やB型の特定の糖タンパク質に結びつくことが示されていますが、O型はこれらの糖タンパク質がないため、相対的にマラリアに感染しにくいとされます。
このため、マラリアが頻繁に発生する地域では自然選択によってO型が有利になり、高い比率で存在するようになったと考えられています。
例えば、ラテンアメリカではマラリアが広く流行していた歴史があり、この地域でO型が多いのは、そのような病原体との相互作用が一因とされます。
一方で、ヨーロッパやアジアでは他の病気が流行した歴史があり、それらの病気との関連で異なる血液型が選択された可能性があります。
もし特定の抗原にしか反応できない場合(たとえば人類全員がA抗原にしか反応できない場合)1種類の強烈な病原体の攻撃により、その地域の人類が全滅してしまったでしょう。
一方、このシステムにも例外があります。
O型が誰にでも輸血できる理由
O型の赤血球には、免疫システムに目をつけられてしまうA抗原やB抗原が存在しないため、O型の血液はA型の人もB型の人もAB型の人にも使うことができます。
またAB型の人はもともと自分の体内にA抗原とB抗原が両方を持つ赤血球が存在しており、自分の赤血球を攻撃しないように、これらを攻撃する仕組みがなく、誰の血液型でも輸血することが可能です。
そのためどんな血液型の患者にも輸血できる汎用輸血液を作成するには、赤血球上に存在する A 抗原やB 抗原をどうにかして、免疫システムに狙われないようにする必要があります。
新たな研究ではこの方法で革新的発見がありました。
なんと私たちの腸内細菌のなかに抗原を溶かしてくれる酵素を持っているものが発見されたのです。