国際会議の場合、会議が成功か否かは参加者数、国数で測られるとすれば、92カ国、そのうち57カ国から大統領・首相級が出席したとすれば、その会議は規模からみて成功したといえるだろう。会議が紛争間の和平をテーマとしている場合、会議を開催すること自体が難しい。その意味でスイス中部ビュルゲンシュトックで15日から2日間の日程で開催された「ウクライナ和平サミット会議」は成功したといえるだろう。
和平会議のスイス開催案は、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)でウクライナのゼレンスキー大統領が要請したことがきっかけだ。会議は中立国スイスとウクライナ政府が共催する形で開催された。
スイスの和平会議は「和平への会議」であって、「和平会議」ではないと、インスブルック大学政治学者でロシア問題の専門家マンゴット教授が言っていたが、その通りだろう。まず、紛争当事国のロシアが参加していない以上、和平解決を議論することはできない。ゼレンスキー大統領自身が「スイスの和平会議はロシアに国際社会の団結を示すシンボル的な意味合いがある」と述べていたのは頷ける。
和平会議の議題からもそのことが理解できる。原子力発電所の安全(ザポリージャ原発)、食糧の安全供給の保証、捕虜・囚人の交換などだ。ロシア軍のウクライナ占領地の領土問題やロシアの賠償問題などホットなテーマは議題ではない。その背景について、ゼレンスキー大統領は当初から「出来る限り数多くの参加国を招きたい」という趣旨があったからだという。ロシア軍の占領地の扱いをテーマとすれば、その是非で立場が分かれる。ロシアの意向を気にして会議に参加できなくなる国も出てくるからだ。実際、ロシアに武器関連物質を供与している中国は欠席し、インドやブラジルは次官級、大使級の派遣でお茶を濁していた。