思考を横に掘る
次は思考を横に掘る技術だ。こちらは「視野の広さ」と表現できる。
結論は必ずしも1つとは限らない。3つも4つもいろんな見方があっていいはずだ。
たとえば日本オワコン論は非常にアクセスを取りやすいキーワードなので、あちこちで「いかに日本がダメか?」ということを言われている。多くの場合、日本のバブル絶頂期をはじめとして下落率を過剰に見せるための数字の取り方を工夫することが多い。
そこで思考を横に掘る。たとえば「日本は同調圧力が強くてダメだ」という意見については、国際比較の調査結果を見るのだ。
日本、アメリカ、中国、韓国4カ国の高校生を対象に国立青少年教育振興機構が実施した調査がある。この調査の「2018年高校生の心と体の健康に関する意識調査」に「友達と合わせていないと心配になるかどうか」という項目はアメリカの高校生が突出して高かった。オープンで自由なイメージのあるアメリカにはpeer pressureという同調圧力という言葉がある(同年代や同じグループ内の仲間からの影響や圧力を感じて、特定の行動や価値観、意見に従うようになること)。
New York Timesなどアメリカのメディアを見れば、日本以上に深刻な社会問題も取り上げられている。中国、韓国も大きく状況は変わらない。このような水平比較で事実を知ることで「日本だけで起きている問題ではないのだな」と安心できるはずだ。ただ、メディアはこうした話を取り上げてもアクセスが稼げないので危機ばかり煽る。世の中がネガティブだらけの情報だと感じたら、そっと離れて冷静に事実を求めて横に思考すれば違う現実が見えてくる。
また、やたらと日本の未来だけが暗雲低迷しており、まるで世界中で「一人負け」かのように言われているが、いろんな言語で検索してみることをおすすめする。
アメリカではdedollarization(脱ドル化)やインフレで不満や不安を高めているし、中国では失業率で絶望している。それ以外の国家でも医療制度、物価高、治安悪化を理由に国外脱出のニュースが出てくる。
世界中、どの先進諸国でも「我が国の将来は希望に満ち溢れていて世界中の人が恋い焦がれる理想郷」なんてないのだ。たとえば、他国で問題になっている異常な物価高、治安悪化を理由に国外脱出があるが、日本ではこれらを理由に脱出はないはずだ。賃金安や税制、政策の不満といった理由で明確に異なるはずである。
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思考は技術だ。自分自身、昔は思考停止の典型であり、見聞きした対象を印象や感情だけで決めつけて何も考えることはなかった。しかし、痛い思いを繰り返してきたことで縦と横に思考を深堀りする癖を身に着けたことで、人様に誇れるレベルではないが、昔の自分に比べて少しは考える力を得ることができたと思っている。
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