産業組織は、他の集団と違って、設立の目的に対して合理的に編成されているところに特色がある。故に効率的ではあっても、目的を超え得ないという自明の限界のもとにあるわけである。そこで、常に問題になり続けてきたことは、目的自体の合理性が失われたとき、組織の弊害が顕在化することであり、組織の目的を社会の変化に即して自律的に変動させることの困難さであった。いうまでもなく、ここに組織の創造的革新の課題があり、その努力の一環として、働き方改革があるということである。

これに対して、産業組織ではない他の集団は、価値を共有する人の緩やかな集まりにすぎないのであって、目的に対して合理的に編成された閉じた組織構造をもたない。産業組織には指揮命令系統をもつ統治構造があるが、産業組織ではない集団には明確な統制がなく、全ては価値の共有に基づく自然な自治に任されているのであって、そこでは個人は独立しているのである。

この価値の共有と個人の独立は、組織との決定的な違いであり、故に、働き方改革において、組織の欠陥に対する対策として重要な機能を演じ得ると考えられる。さて、この何らかの価値を共有する集団は、構成する個人が独立しているという意味では、自治的な共同組織と呼ばれるのが一番相応しいが、片仮名でいえば、コミュニティーである。

森本 紀行 HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 HC公式ウェブサイト:fromHC twitter:nmorimoto_HC facebook:森本 紀行

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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