新技術ですので当然、さまざまな選択肢の中から最善と思われるものが選ばれ、かつ企業は必死でそれに改善改良を重ねていくことで世界のデファクトスタンダードを確保するわけです。特に量子コンピューターになると未開の世界とも言ってもよいわけでここでの研究が世界を圧倒するかどうかがポイントなのです。
似たように話はEVの電池があります。今のリチウムイオンから半固体、全個体型といったコンダクティブ型をはじめ、インダクティブ方式や着脱型など様々あり、それぞれに特徴があり、用途ごとの使い分けも今後進むだろうとみています。着脱式はトラックやタクシーなどに向いているでしょうし、今はまだほとんどないですが、インダクティブ方式だと所定の場所に止めるだけで充電ができるのでいちいち充電器を差し込む必要がなくなります。
ではこのあまのじゃくなアプローチに対して日本は勝ち目があるのか、であります。
日本の強みは深掘りができることであります。但し、私はオールニッポン方式で機能するかは正直わかりません。というのは各社それぞれ精鋭を新会社に送り込むわけでそれぞれの言い分がぶつかり合い、時として妥協の産物になるのです。それは後ろで糸を引く企業と送り込まれた精鋭に指示をするボスの立場がそうさせるのでしょう。
例えば国策半導体会社とされるラピダス(トヨタ、ソニー、ソフトバンクなど8社と創業個人12名)が2ナノ半導体を目指すとして北海道千歳市で工場建設を進め、世界でも最高水準となるレベルを目指すことになっています。
熊本に工場を完成させたばかりの世界最強、TSMCが台湾資本であることに対して日本の粋を集めるというアプローチは量子コンピューターの開発とそっくり同じです。ただ、私は我の強い大手企業がしっかりまとまり各社の最先端の技術やノウハウを共同事業体に供出するのか、はなはだ疑問なのであります。
もう1つの共通点は何か、といえば国粋主義なのです。つまり、日本が世界に勝つという発想があまのじゃくなのです。「世界と共に勝つ」ではなく「日本方式が勝つ」なのです。このこだわりが時として私にはよくわからないのです。
例えばコンピューターの世界でリナックス方式というオープンソース型に対して日本企業が得手な企業秘密として詳細を見せないブラックボックス方式があります。どちらが優位だったかと言えばオープンソース型ではなかったかと思います。理由は世界の頭脳が結集したからで、その果実は自分だけではなく、皆で分けるというやり方でした。
日本は負けず嫌いで激戦を戦い抜く意気込みはすさまじいもののこのところ、負け続きです。しかも負けたらあっさり撤退してしまう潔さがあり、そのうち「そんなこともあったよな」なのです。もっと粘ればいいのに、と思う訳です。その点、マツダのロータリーエンジンは粘ったと思います。孤軍奮闘でしたが、やっぱりあまのじゃくであることは変わりないと思います。
それが日本の良さでもあるし、ユニークネスでもあります。日本を外から見るとおとぎの国というか、大人のディズニーランド的なおもちゃ箱をひっくり返したような創意工夫がバラバラに存在していて秩序がないと思うこともしばしばです。
例えばコンビニでの決済方式、いったいいくつあるのでしょうか?そこまで必要なのか、と私は思う訳です。だけど誰も引かない、あるいは統合しようとしないところに世界とも協業出来ない弱さを見てしまうのであります。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年2月28日の記事より転載させていただきました。
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