アンドロメダという天体について、「アンドロメダ大星雲」と「アンドロメダ銀河」という二通りの呼び方を聞いたことがあると思います。

そのためアンドロメダには大星雲と銀河が、それぞれあるんじゃないかと勘違いしている人もいるかもしれません。

しかし、この2つは同じ1つの天体を指しています。

星雲と銀河。まるで違う天体なのに、なぜ混同して呼ばれているのでしょう? 今回はその理由を天文学の歴史を通して解説していきます。

すべての始まり 星雲を記録したメシエ・カタログ

星雲(NGC 604)。
星雲(NGC 604)。 / Credit:Wikipedia

星雲は、星間ガスや宇宙塵が集まってできた、その名の通り宇宙に浮かぶ雲のような天体です。

古代の天文学者たちは肉眼でこの天体を発見し、「ネビュラ:Nebula」(星雲の英名。語源はラテン語で霧・雲を表す単語「nebura」)と呼んだのです。

はっきりとした星の輝きと異なり、ぼんやりと滲んで見えるこの天体は天文学者たちにとってずっと謎の存在でした。

しかし、望遠鏡の精度が上がってくると、星雲は非常に夜空にたくさんある天体だということがわかってきます。

正体はわからないものの、星雲というほんやりした天体は宇宙ではごくありふれたもので、それほど特殊な天体ではないという認識が天文学者たちの間には広まっていくのです。

そんな星雲の研究で有名なのが、18世紀フランスの天文学者シャルル・メシエです。

星雲のカタログを作成したフランスの天文学者、シャルル・メシエの肖像。
星雲のカタログを作成したフランスの天文学者、シャルル・メシエの肖像。 / Credits: NASA,R. Stoyan et al., Atlas of the Messier Objects

ただ、メシエ自身は星雲の研究をメインにしていたわけではありませんでした。メシエは時の国王ルイ15世から、「彗星探索者(フユレ・デ・コメート)」の二つ名を賜ったほどの彗星研究者だったのです。

メシエは夜空で彗星を探すとき、彗星と非常によく似た紛らわしい天体が多いことに悩みました。

その紛らわしい天体こそが星雲です。

当時の望遠鏡では、尾を伸ばして夜空を駆ける彗星と、ぼんやり滲んだ星雲は非常にそっくりで見分けがつかなかったのです。

星雲は動かないので時間が経てば見分けがつきますが、見つけるたびに動くまで確認したのでは時間がかかって仕方ありません。そこでメシエは、発見したこの紛らわしい天体(星雲)の一覧表を作ることにしたのです。

メシエは1784年までに103個の星雲を発見し、そのスケッチを記録として残しました。そしてこのスケッチの一覧は「メシエ・カタログ」と名付けられました。

メシエによる星雲のスケッチ。
メシエによる星雲のスケッチ。 / Credit:wikipedia

メシエカタログに記録された星雲には、すべて「M」から始まるメシエナンバーが割り振られています。

ウルトラマンの故郷とされる「M78星雲」というのも、メシエカタログの78番目に記録されている星雲という意味です。

アンドロメダ星雲は、このカタログに「M31」として記録されています。しかし、アンドロメダは現在は星雲ではなく銀河であることが分かっています。

このことが、長い天文学の論争の始まりとなるのです。