簡単に銃を入手できる国や地域では、銃を使った事件や自殺が後を絶ちません。

比較的安全な日本では本物の銃を見かけることは滅多にありませんが、映画やゲームの中ではよく登場しますね。

そして世界のどこに住んでいようと、私たちは「頭部への銃撃 = 即死」という共通のイメージを持っています。

頭部を狙う「ヘッドショット」や、頭に銃を突きつけるシーンを、誰もが確実に命を失うことと結び付けて捉えています。

ところが実際は、頭部を撃ち抜かれた人が必ず死ぬわけではありません。

では、どのようなケースで、ヘッドショットを受けても生き残ることができるのでしょうか?

頭部を銃撃されても「脳幹」に損傷がなければ助かる!?

統計的に見ると、頭部に銃弾を受けて死ぬ確率は95%です。

これは約5%の人は生還するということであり、多くの人が持っている「頭部への銃撃 = 即死」というイメージは誤りであると分かります。

頭部を撃たれても生還することがある
頭部を撃たれても生還することがある / Credit:Wikipedia Commons_銃創

では、これら5%の人々は、どのように助かったのでしょうか。

ヘッドショットから生き残ることができるかどうかは、弾丸の物理学と人体の生物学から知ることができます。

生物学の観点から考えると、まず考えるべき重要なポイントは「弾丸が命中する部位」です。

人間が生きるために特に大事なのは、呼吸・心拍・消化・体温調整などの生命維持に直接関与している「脳幹」です。

そのため、弾丸が脳幹にダメージを与えるなら、生き残ることは難しいでしょう。

ただし、脳幹のサイズは比較的小さく、大脳の下部に位置しているため、頭を打ちぬかれたとしてもここが損傷する確率は低めです。

脳幹。狭義には赤色部分のみ。広義にはオレンジ色も含む
脳幹。狭義には赤色部分のみ。広義にはオレンジ色も含む / Credit:Wikipedia Commons_脳幹

では、脳の他の部位が撃ち抜かれた場合はどうでしょうか。

脳全体の80%を占める大脳は、運動・知覚・精神活動に関与していますが、ここを撃ち抜かれたとしても即死することはないようです。

実際、大脳の一部に損傷を負っても生存した人がこれまでにも確認されています。

もちろん、損傷した部分の機能は失われますが、やがて他の部位が失われた機能を肩代わりすることもあるようです。

例えば大脳は右半球と左半球に分かれており、正面からの銃撃によって片方の半球だけが損傷した場合、もう片方の半球がその機能を補う可能性があります。

エンジンを2つ積む双発の飛行機が、片方のエンジンが故障しても、なんとか飛ぶことができるように、片方の大脳に損傷を負った人も何とか立ち直ることがあるのです。

特に前頭葉(大脳の前部分)は、ヘッドショットの際に損傷を受けやすい部位ですが、ここだけの損傷であれば生存率は比較的高くなります。