(3)先送りしやすくなる

人がある行動を取ろうとするとき「やるかやらないか」の選択肢、つまり「迷い」があるとその行動は先送りされる可能性が高まる。この話は逆に「なぜ人は締め切りギリギリになると、仕事にとりかかれるのか」を考えるとわかりやすい。

たとえば1時間後にはじまる会議で使う資料をまだ作っていないとする。こんなギリギリの状態なら、君は資料作りを先送りしようなどとは微塵も考えず、資料作成にすぐにとりかかるはずだ。なぜか。

それは「今」資料作成に着手しなければ間に合わないからだ。このタイミングで君には資料作成に「今」取り組むか、「後」で取り組むかの選択肢がない。仕事を放棄しない限り、そのタスクを先送りするという選択肢が生まれない。だからこそ君は、確実に資料作成に着手することができる。

このことからわかるのは、人は「今やるか、後でやるか」の選択の余地がなければ仕事を先送りしないということだ。「上から順番に処理する」タスクリストはこうした人の習性を利用して、先送りのリスクを極小化するものだ。

リスト通りに上から順番にこなしていくとルール化することで、選択といった「思考」の入りこむ余地をなくす。ここがポイントだ。なぜなら思考の入りこむ余地があるからこそ、人には迷いが生じ、先送りが起きやすくなるからだ。

さまざまな思考の中には「今は疲れてるし、どうしようかな」という迷いも含まれる。こうした迷いが生まれ、選択肢が生じた時点で「負け」だ。しかも次のタスクが難解なものであれば、かなりの確率で先送りするハメになるだろう。

これはそこに「迷い」が生まれたからだ。迷いが生じて安易な選択をしてしまった経験は誰にでもあるはずだ。ロボットのようにルールにのっとり、迷いや選択肢の余地を自分自身に与えないことでどんどん仕事を進めていけるようになるというわけだ。

滝川 徹(タスク管理の専門家) 1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。

編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年4月22日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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