仕事をはじめる前にこうしたタスクリストを作れば、君は安心して仕事を進めていけるはずだ。なぜならタスクリストに書かれた通りに上から順番にタスクをこなしていけば、18時に仕事を終えることがわかっているからだ。

始業とともに、リストの一番上に書かれているタスクAに着手する。タスクAを完了したらタスクBに取り組む。タスクBを完了したら次はタスクCに着手する・・といった感じでリスト通り上から順番にタスクを処理していけばよい。

どうだろう。タスクリストが先程のメンターと同じ役割を果たしてくれていることがわかるだろうか。

もちろん現実には、リスト通り完璧に仕事が進んでいくことはまずない。取引先から電話がかかってくるかもしれないし、上司や同僚から声をかけられることもあるだろう。

しかしそうした「割りこみタスク」に対する対処法さえ身につけていれば、それらが発生しても君はすぐにまたタスクリストに戻って再び流れるように仕事を進めていけるようになる。

戻るための「本線」がしっかり整っていれば、脱線を余儀なくされてもすぐまた軌道修正できるようになるのだ。

ここまで読んで「そんな機械みたいに上から順番にタスクをこなす必要なんてないだろう」と思った人もいるかもしれない。

たとえば図1の場合、必ずしもA→B→C・・という順番でタスクを進めていかなくても各見積時間の合計は同じ9時間なのだからC→A→B・・と取り組んでも問題ないはず。そう考える人もいるだろう。

もし完璧に遂行できる機械であれば、その考え方は間違っていない。しかし人間の場合、事前に順番を決めておかないと、タスクを実行できない=先送りしてしまうというやっかいな問題が生じる。

この先送りを起こさないために必要なのが「上から順番に処理する」というルールなのだ。なぜ「上から順番に処理する」ことが大切なのか。大切なことなので丁寧に説明していきたい。

タスクリストなしで仕事をする3つのデメリット

「上から順番に処理する」ことのメリットを説明するためにここでは逆に、上から順番に処理するタスクリストを使わないとどんなデメリットが生じるのか。話していこう。

デメリットは次の3点になる。

(1)認知リソースをムダに消費する (2)冷静な判断ができなくなる (3)先送りしやすくなる

一つひとつ説明していこう。

(1)認知リソースをムダに消費する

意外かもしれないが、次にどのタスクに取り組むか意思決定するだけでも認知リソース(≒いわゆる意思力のようなもの)は消費される。

リストに10個のタスクが順不同に書き出されているとする。ひとつのタスクを終えるたびに「次はどれに取り組もうか」と取捨選択する際も、考える分、頭を使うはずだ。ここでも我々は認知リソースを消費しているのだ。

どのタスクに取り組むか意思決定するのに、1回ならたいして認知リソースを消費しないかもしれない。だが1日10回、20回も意思決定していればそれなりに認知リソースを消費する。

我々は日々の生活において意識する・しないにかかわらず、さまざまな意思決定を行っている。アップル社の創業者スティーブ・ジョブズやフェイスブックを立ち上げたマーク・ザッカーバーグが、毎日の服装を同じスタイルで統一して日々の決断つまり意思決定の頻度を減らしたと言われているのは有名な話だ。

「上から順番に処理する」とルール化してしまえば、タスクAに取り組んだ後に次はどのタスクに取り組むかなどと考える余地がなくなる。その結果、認知リソースを消費せずにどんどん仕事に取り組んでいけるようになる。

認知リソースは非常に貴重な資源だ。これをムダ使いするメリットはひとつもない。「上から順番に処理する」タスクリストを使って、認知リソースを節約しよう。

(2)冷静な判断ができなくなる

先にも触れたが、日々仕事に忙殺されている状態では人は冷静な判断をすることが難しい。

たとえば仕事が多すぎるため取りこぼしがないようにTODOリストに今日やるべきA〜Eまで5つのタスクを順不同に書き出しているとする。今は午前10時。認知リソースが比較的豊富にある状態だ。

難敵のタスクBに集中して取り組もうと思った矢先、取引先から電話がかかってきた。先方の上司同席で1週間後にプレゼンをしてほしいと依頼される。ここで君が冷静なら電話を切ったあと、本来取り組もうとしていたタスクBに着手しはじめるだろう。

だが、ただでさえ抱えている業務が多いなかTODOリストにさらに新しい作業が加わった。その事態に焦りが生じる。焦りは冷静な判断力を奪う。判断力が低下してしまうと、目の前のやるべきタスクではなく新たに出現したタスクに「ひとまず今取引先から依頼されたプレゼンの準備に取り組もう」と考えてしまうのだ。

そうして気がつけば夕方になる。この時間帯になると認知リソースはほとんど残っていない。ここからタスクBに取り組もうと思っても、もう遅い。君は「タスクBは明日、集中して取り組むか」と考える。結果本来やるべきだったタスクBに取り組めずに1日を終えることになる。

このように、心に余裕のない状態では人は冷静な判断ができなくなり、安易な選択をしてしまいがちだ。これを避けるためには迷いが生じないように「上から順番に処理する」ルールにのっとる必要がある。

この話が次の(3)の「先送りしやすくなる」の話につながる。