プランクやランニングなど時間を決めて運動した際、時計を見て「思ったより時間が進んでいない」と感じたことはないでしょうか?
人の感じる時間経過は状況によって伸び縮みすることが報告されていますが、運動に関しても以前から「時間の認識を遅くする」効果があると考えられています。
イギリスのカンタベリークライストチャーチ大学 (Canterbury Christ Church University)心理生命科学部に所属するアンドリュー・マーク・エドワーズ氏ら研究チームも、実際の競技を模したサイクリングテストにより、運動中は運動前後に比べて時間経過の認識が遅くなると報告しています。
そして興味深いことに、今回の実験では、その時間の遅延が、競争相手の有無や、自覚的運動強度(いわゆる「きつさ」)とは無関係であることも示されました。
運動はきついほど時間を遅く感じそうに思えますが、今回の結果は「運動行為そのもの」に時間の認識を遅らせる効果があることを示唆しています。
研究の詳細は、2024年4月1日付の学術誌『Brain and Behavior』に掲載されました。
運動中は「時間がゆっくり過ぎている」ように感じる
これまでの様々な研究により、運動には「時間経過の認識を遅らせる」可能性があると分かってきました。
しかし、「運動」といっても、様々な分野やケースがあります。
自分でゆっくりとランニングする場合もあれば、目標を定めてストイックに励む場合もあるでしょう。
また他者と一緒に楽しんで運動する場合もあれば、競技のようにベストを尽くして競争する場合もあります。
さらに運動の強度も様々です。
だからこそ、運動がもたらす「時間認識の遅延効果」をより正確に理解するためには、様々な実験を積み重ねる必要があります。
ところがエドワーズ氏ら研究チームによると、「これまでの研究のほとんどは、運動の強度が固定されていた」というのです。
そのため、実際の競技やその練習で見られるような、「高い記録を狙って、自分のペースで強度を変えながら行う運動」は、ほとんど考慮されたことがありませんでした。
またある競技では、自分の隣に競争相手が並びますが、その存在が時間認識にどのような影響を与えるのか、十分には分かっていません。
そこで彼らは今回、これまでの研究で見落とされがちだった、実際の競技環境を模倣した運動中の時間認識について調べることにしました。