1963年に発生したケネディ大統領暗殺事件。同年11月22日現地時間12時30分、米テキサス州を遊説中だったジョン・F・ケネディ大統領が、ダラス市内をパレード中に銃撃され、死亡した。犯行はリー・ハーヴェイ・オズワルドによるものとされているが、彼が狙撃したという建物からは狙うのが難しいという指摘などもあり、今だに謎の多い事件である。
ケネディ大統領暗殺事件の謎:バブーシュカ・レディの登場
オズワルドが犯人でないとすれば、いったい誰が実行犯だったのだろうか。当時、ケネディ大統領の車列がディーレイ・プラザを通過する様子は多くの人々に見守られていた。その中に犯人が隠れていたのではないかとして、現在も襲撃当時の動画の検証が行われている。群衆の中で特徴のある人は「アンブレラマン」や「バッジマン」といったニックネームで呼ばれることもあり、中には後年になって身元が判明した人物もいた。だがその一方で、今も正体不明の人物がいる。ロシアの年配女性が頭に巻くスカーフのようなものを身に着けていたことから「バブーシュカ・レディ」と呼ばれるようになった女性もその一人だ。
彼女は当時、エルム通りとメイン通りの間の芝生の上に立ってケネディ大統領の車列を撮影していた人物だ。そして、銃撃の瞬間も至近距離で撮影している。しかし、50年以上たった今でも彼女が誰なのかはまったくの不明。そして、彼女が撮影したであろう大統領暗殺の映像も見つかっていないのである。
今から50年以上前とはいえ、当時の米国はカメラやビデオカメラを持っている人も多かった。ダラスで行われたパレードでは、多くの人々が記念として撮影しており、期せずして大統領が暗殺される一部始終もフィルムに納めることとなった。前述の謎めいた女性バブーシュカ・レディも、複数の動画や写真にその姿を捉えられている。
ダラス在住のマリー・ムックモアさんが撮影したフィルムでは、チャールズ・ブレム氏と彼の息子ジョー(当時5歳)の背後に立つバブーシュカ・レディの姿が捉えられている。背中からしか見えないが、彼女はロングコートを着て両腕を顔の横に上げたポーズをとっていたことがわかる。また、郵便配達人のマーク・ベル氏が撮影した別のビデオでは、車列が通り過ぎた直後の映像にバブーシュカ・レディの姿を確認できる。ここでは彼女はカメラに背を向け、通りに近づいて草むらの向かい側に立っているように見える。周囲の人々がショックで逃げたり、地面に座ったりしている中、彼女は立ったままで落ち着き払っているように見えるとの指摘もある。
また、最も有名な市民が撮影した記録動画であるザプルーダー・フィルムでは、バブーシュカ・レディの正面からの姿を見られるが、当時の画質では残念ながら顔ははっきりと捉えられていない。