そのモデルでは、私たちの代わりとして、「エージェント」と呼ばれる数学的な意思決定者が登場します。

そしてエージェントには2つの選択肢が与えられますが、その際、私たちと同じように、外界から情報を収集し、最終的にどちらか1つを選ぶよう設計されています。

例えば、エージェントは、夕食に「ピザを食べるか」それとも「タイ料理を食べるか」という選択肢の中から1つを選びます。

研究チームが、様々なパターンで数千のエージェントを使って合計数百万回のシミュレーションを実行した結果、エージェントは大きな偏見(または好み)を持っていた場合、迅速に決断を下すと分かりました。

たとえその決定が利用可能な様々な情報に反するものだったとしても、エージェントはそれらの情報を破棄して決定してしまいました。

例えば、エージェントがピザの方が好きだった場合、たとえタイ料理レストランの方がはるかに良い評価・口コミを得ていたとしても、エージェントはピザを即座に選択するというわけです。

対照的に、偏見の少ないエージェントは、非常に長い時間をかけて検討することが多く、最初の先入観はその熟考プロセスにより完全に洗い流されました。

「私たちの脳がどのように物事を決定するか」という疑問に対する答えとして、この研究の結果はおそらく納得のいくものでしょう。

もともと偏見がある人は、多くの情報を熟慮せず、すぐに決めてしまう傾向があるのに対し、偏見が少ない人は、多くの情報をじっくりと考慮するので、決断にはどうしても時間がかかってしまうわけですね。

偏見がない人は、時間は掛かるが最善の決断を下し易い

今回開発された数学モデルのエージェントでは、判断を下す際どのように偏見が反映されていたのでしょうか。

研究チームは、「水の入ったバケツをイメージすると分かりやすい」と述べています。

私たちの検討プロセスは、バケツに水を注ぐ時のよう。水がいっぱいになると決断が下される。
私たちの検討プロセスは、バケツに水を注ぐ時のよう。水がいっぱいになると決断が下される。 / Credit:Canva