今回、話題となっている「紅麹」製品は機能性表示食品に分類されるものだ。もし、報道されているように青かびに由来すると考えられる成分が含まれているとした場合、誰かがプベルル酸か青かびを故意に加えたか、製造過程で青かびが混入するような不備があったのかとなる。もちろん、紅麹菌に突然変異が起こって想定外のものを作り出した可能性は否定できない。問題になっているプベルル酸は文献情報もほとんどなく、七員環構造の珍しい形(炭素分子が7個並んで輪になっている形:5角形や6角形の構造をしている化合物はよく見かけるが)をしているので、簡単に入手できるとは考えにくい。企業の責任での届け出だけで簡単にすむので、市場に出回っている機能性表示食品は約7000品目もあるそうだ。事業者の責任なので、基本的には何が起こっても企業の責任となる。果たして、これでいいのかという問題が浮き彫りになったのは当然だ。
テレビでも多くの製品が紹介されているが、それらの製造過程がどれだけ厳格に管理されているのかが問われている。それ以外にも、肌がプルンプルンになったり、まるで軟骨成分になるような宣伝がなされている。タンパク質を摂取しても、アミノ酸に分解されてから吸収されるはずなので、どう考えてもおかしい?
そして今回の報道でも明らかになったのがメディアのリテラシーの低さだ。たとえば、学会の調査で47人の被害が確認され、「そのうち40-69歳が約9割を占め、やや女性が多い傾向」と報道されていたが、この機能性食品を摂取していた人のうち、40-69歳の割合かがわかりませんし、女性の割合もわかりません。摂取していた人の年齢層の9割が40-69歳であり、女性の割合がやや多ければ、この「40-69歳」「やや女性が多い」は科学的には何の意味も成さない。まるで、この年齢以外の人には、あまり影響ないかのようなミスリードだ。亡くなっている方は高齢者なのに、よく考えて記事を書いて欲しいものだ。
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編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2024年4月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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