「ワクチンを打つと自閉症のリスクが増す」「このサプリメントを摂取すると・・・・などの有害事象が起こる」「産業廃液で健康被害が出た」などの訴訟の種が尽きない。紅麹の被害でも、どこまでがこのサプリメントの影響であるのかどうかの線引きが難しい案件も出てくるであろう。
紛争や裁判に際して引っ張り出される医学・科学専門家のリスクと報酬についての記事が3月1日号のScience誌に掲載されていた。「Taking The Stand:For scientists, going to court as an expert witness brings risks and rewards」(裁判の証人に立つことのリスクと報酬)と「A witness, then a target」(証人から標的へ)である。
科学者が被害者側に立って証言すると、原告側は大きな賠償金(補償金)を回避するために、証言を科学的に否定するだけでなく、証人の人格攻撃までしてくることはよくある。私もかつてバイオプシー標本の取り違えについてDNA鑑定をして証言することを依頼されたことがあるが、DNA鑑定そのものへの疑義が出ていた時代であったのでお断りしたことがある。
紅麹でさえ、当初の報告から3か月以上経つ今でも、青カビが混入したのが原因なのか、そうだとするといつどこでどのように混入したのかさえ明らかになっていない。古くは水俣病やイタイイタイ病でも、原因が明らかになるまで、年単位の日時が必要とされた。