量子コンピューターが量子的状態を維持し、それが崩壊するときに答えを算出するように、意識も量子状態の発生と崩壊によって出現するのです。
この考えは量子意識理論の中でも有名な一節であり、神経科学者のスチュアート・ハメロフとノーベル物理学賞受賞者であるロジャー・ペンローズによって提案されたもので、意識が単なる神経回路の活動ではなく、量子現象に依存しているという考えを持っています。
そこで新たな研究でウェルズリー大学の研究者たちは「意識が微小管によって作られるならば、微小管の保護を厚くしてやれば麻酔薬への抵抗性が増すのでは?」と考え、以下のような実験を行いました。
調査にあたっては実験用のラットが用意され、微小管を安定化させる作用が知られているエポチロンB(epoB)が投与されました。
これまでの研究により、タキサン化学療法など微小管を安定させる作用がある薬を投与された患者では麻酔の有効性が低下することが知られていたからです。
また麻酔薬には揮発性麻酔薬の一種である4%イソフルランが使用され、ラットが意識を喪失するまでの時間が計測されました。
もし微小管が意識の発生や維持に重要な役割をしているならば、微小管安定化薬を加えることで、麻酔の効果に抵抗できるはずです。
すると、エポチロンBを与えられたラットでは、そうでないラットに比べて、麻酔によって意識を失うまでの時間が平均して69秒長くかかることが判明。
これは統計的にも有意な値でした。
この結果は、微小管の安定化が意識の維持において重要であることを示しています。
同様の結果はオタマジャクシを用いたケースでもみられており、微小管安定化薬の投与によって全身麻酔に抵抗する効果を得られたことが示されました。
さらに別のシミュレーション研究では、微小管を構成するタンパク質(チューブリン二量体)に8種類の麻酔薬と麻酔薬ではない薬が結合したときの分子挙動が計算され、麻酔薬が結合したときにのみ、微小管タンパク質サブユニットの高周波振動が破壊されたことが示されました。