■写真に撮影された「ブロスノ・ドラゴン」
ここまでならばよくある歴史上のフォークロアにすぎないと片付けることもできるが、1991年のソ連崩壊後、伝説上の存在にすぎないと思われていたこの怪物が、にわかに現実的な存在として注目を浴びることとなったのである。
1996年、モスクワからやって来た旅行者がブロスノ湖の湖面を泳ぐ正体不明の生物の写真を撮影した。(上の写真)このことをきっかけに多くのジャ-ナリストやカメラマンらがブロスノ湖に未確認の巨大生物が生息する可能性について、本格的な調査が行われた。翌97年にも湖面を泳ぐ謎の生物が幾度となく目撃され、湖の周辺に住む住民はもはや伝説上の存在ではなく、「やはりブロスノ湖には正体不明の怪物が棲んでいる」と、その実在に確信を抱き、怪物の襲撃に備えて家の防御を固めている様子が、イタル・タス通信などによって報じられた。
2002年にはロシア国内のUFOや未確認生物を調査する科学者を統合している専門団体が、ブロスノ湖の水中の音波調査を行った。このことはモスクワの新聞でも報じられたが、それによると湖底から5メートルほどの水中に、貨物列車ほどあるゼリー状の物体が浮いていることを音波探査機が探知した。その物体はしばらく静止状態だったが、やがて湖中を急上昇し、水面に浮かび上がって来た。それは全体が白みを帯びた巨大な肉塊のような物体であった。伝説上語り継がれている「ブロスノ・ドラゴン」とはまったく違った形をしていたため、この一件はブロスノ湖をめぐる新たな謎を喚起することになった。