ネッシー、ビッグフット、ヒバゴン、チュパカブラ……世界には謎多くも魅惑に満ちた多くの未確認生物(UMA)が存在する。それらは古くから人々の口から口に伝承のごとく語り継がれてきた。
そして、日本の約46倍に及ぶ広大な国土を持ち、数奇で波乱に満ちた歴史を有するロシアにも、もちろん(と言うべきだろうが)、そうした魅力的(?)かつ謎に満ちた未確認生物が存在する。
■ロシアで“伝説”として語り継がれる歴史的未確認生物
今回紹介するのはロシア西部・トヴェリ州のブロスノ湖で古くから人々に目撃され、ロシアで伝承のように語り継がれてきた怪奇生物「ブロスノ・ドラゴン」である。
ロシア西部のトヴェリ州北西部、ヴァルダイ丘陵のなだらかな緑の山々に囲まれた自然豊かな地に、青々とした水を湛えた神秘的な湖・ブロスノ湖がある。
湖の面積は7.2平方キロメートル、周囲16.2キロメートル、最大深度41.5メートル、平均深度は17メートルのブロスノ湖はトヴェリ地方で最も深い湖である。ひっそりとした静かで神秘的なこの湖には中世以来、伝説上の巨大生物が生息していると、ロシアの人々は語り継いできた。
時は13世紀、ノヴゴロド公国がロシア北西のこの地を治めていた時代、チンギス・ハンの孫・パトゥ率いるモンゴル帝国の西方遠征軍がこの地に押し寄せて来た時のことである。遠征軍一団がブロスノ湖のほとりで休息をとっていると、突然一団の馬が暴れ出し、そのまま湖に引きずり込まれた。見ると、湖の中から体長5メートルはあろうかという竜のような巨大生物が現れ、一団の馬や兵士を飲み込もうとしていたのだ。一団はなす術もなく、ほうほうの体でそこから逃げ出した。結局このことが原因となって、当時この地を統治していたノヴゴロド公国はモンゴル帝国の侵略を免れたという。
この時からブロスノ湖の怪物は、大きな戦乱や歴史を揺るがす事変が発生するたびに、幾度となくその姿を見せ、ロシアの人々の間で伝説として語り継がれていくこととなる。ヴァイキング(古くから西ヨーロッパ沿海部を侵略したスカンジナビア・バルト海沿岸の武装船団)が、自分達の盗品を隠すために船でブロスノ湖上の島に上陸しようとしたところ、この怪物が現れてヴァイキングの一団を島ごと飲み込んだという言い伝えもある。また、第二次大戦中にはブロスノ湖の上空を飛行するナチス・ドイツの戦闘機を、この怪物が食べたという噂まで流れた。ある時は巨大な砂山のような物体が湖に出現しては消えるということが度々あり、また漁師が船に乗っていると湖の中から巨大な“口”が現れ、漁師を船ごと丸のみにしたという話もまことしやかに語り継がれている。