「雷を自在に操る」新技術が登場! レーザーで危険な落雷を、線を描くように誘導できる

これまでの実験では人工稲妻によるレーザー誘雷は成功していましたが、自然に発生した稲妻を誘導できた例はありませんでした。

しかし今回、ウルフ氏ら研究チームは、パルスレーザー(短い間隔で点滅を繰り返すレーザー)を利用して、自然の稲妻を誘導することに成功しました。

自然発生した稲妻のレーザー誘雷に成功!今後の進展に期待!

スイスのゼンティス山で実験が行われる
スイスのゼンティス山で実験が行われる / Credit:Jean-Pierre Wolf(University of Geneva)et al., arXiv.org(2022)

実験が行われたのは、スイス北東部のゼンティス山です。

ここには124mのタワーがあり、金属製の避雷針が備わっています。

そして隣から高出力のパルスレーザーを空に向かって発射することで、「稲妻の道」を作り、自然発生した稲妻をタワー(避雷針)まで誘導しようとしたのです。

設置された避雷針とパルスレーザー装置
設置された避雷針とパルスレーザー装置 / Credit:Jean-Pierre Wolf(University of Geneva)et al., arXiv.org(2022)

実験は2021年7月21日~9月30日の約3カ月間続けられ、その間、タワーから3km圏内で発生した雷雨に応じて、合計6.3時間レーザー装置を作動させました。

その結果、観測された16回の稲妻のうち4つが避雷針まで誘導されました。

パルスレーザーによってつくられた「稲妻の道」に引き付けられて、避雷針まで導かれたのです。

単純に避雷針だけの効果ではなく、レーザーの効果によって避雷針まで導けていることも、専用の観測機器によって明らかになっています。

自然発生した稲妻が避雷針に誘導される
自然発生した稲妻が避雷針に誘導される / Credit:Jean-Pierre Wolf(University of Geneva)et al., arXiv.org(2022)