それら高齢者が積み上げた資産が第二次相続で60代半ばの子供に相続されるときが問題です。つまり子供が何人いるかであります。今、60代半ばに差し掛かる人はいわゆる「核家族」の上に一人っ子時代がいよいよ始まったころです。兄弟がたくさんいる家庭がどんどん減り始める頃です。ということは第二次相続の被対象者は1人、ないし2人であるわけです。
相続税の控除は3000万円プラス法定相続人1人当たり600万円です。仮にひとりっ子なら3600万円、2人でも4200万円です。では二次相続の際、いくら相続するのか、三菱UFJ関連会社が調査した資料によると2018年が2114万円、2020年に3273万円に膨れ上がっているのです。2年間でそんなに増えることはいくら何でもないのでデータのぶれが大きく実態が分かりにくいのでしょう。注目しているのは2020年の中央値が1600万円なのです。なのに平均がその2倍の3273万円ということは多額の相続をしている方が多くいて、その金額が平均値を一気に引き上げていると言えるのです。
最大の疑問は60歳台半ばにして資産が急増してもどうするかであります。人の生活テンポや金銭感覚は小さい時に獲得する習性です。その上、一定年齢になるとどうしても消費力は落ちます。食も細くなるし、そんなに頻繁に出かけません。旅行の回数も減り、服飾へのこだわりも減ってきます。つまり突然多額の相続をしてもその使い道に困る、これが流れだと思います。
多くのケースでは「それならとりあえず銀行に入れておくか」「株式投資でもしようか」になり資産のフリーズ(凍結化)となり、それが次の世代につながることになるのでしょう。その場合、相続税でしっかり搾り上げられます。これはもったいないわけです。
お前なら何か考えがあるか、と言われたら「はい」と答えます。政府が公認する指定寄付先に相続資産を死後に寄贈する旨が遺言等で明示され実際に寄贈された時点でその相当額が相続税から控除されるようにするのはどうでしょうか。そうすれば一方的に財務省に吸い上げられるのではなく、自分の遺産を自分の意思で配分することができるのです。もちろん、それは相続する身内の人にとって「ふざけるな」という怒りを買うケースも当然あり得ます。しかし、高額の相続ほど被相続人は無意味なお金を引き継ぐことになる場合が多いのです。ならば社会に還元できる仕組みを作るべきでしょう。