大丈夫、あなただけではありませんから…
デモデックス・フォリクロルム(Demodex folliculorum)は、ヒトを唯一の生息地とするダニの一種です。
食事から交尾、出産、死に至るまで、すべてのライフサイクルが人体の皮膚上で展開されます。
このようにD. フォリクロルムは人間に依存して生きていますが、英レディング大学(University of Reading)の2022年のゲノム研究によると、彼らは近縁種のダニには見られない驚きの変貌を遂げ始めています。
なんとD. フォリクロルムは不要な遺伝子や細胞を切り捨て、「外部寄生」から「内部共生」への進化を進めていたのです。
D. フォリクロルムはやがて、人体と融合し、私たちと一体化するかもしれません。
研究の詳細は2022年6月21日付で科学雑誌『Molecular Biology and Evolution』に掲載されています。
目次
- ゲノム解読から「進化の行き詰まり」を迎えていると判明!
- 「寄生体」から「共生体」への進化の途中か?
ゲノム解読から「進化の行き詰まり」を迎えていると判明!
「顔にはダニが住んでいる」という話を聞いたことがある人は多いと思います。
あまり考えたくはないでしょうが、通称「顔ダニ」と呼ばれるD. フォリクロルムは、私たちの出産時に寄生し、地球上のほぼすべての人の肌に見られます。
体長はわずか0.3ミリ程度で、普段は顔やまつげの毛穴の中に住み着いています。
体はソーセージ状の長い胴体をしており、前方に小さな口や脚が寄り集まっています。
まあ、顕微鏡上で見る分にはクマムシみたいで可愛いものです。
彼らは毛穴の中の細胞から分泌される皮脂を唯一の食料源とし、約2週間の寿命の大半を食事に費やします。
D. フォリクロルムが毛穴から出てくるのは夜間のみで、その間に皮膚上をゆっくりと歩きながらパートナーを探し、交尾を済ませて、暗いうちに再び毛穴に戻ります。