これらの症状と孤独の因果関係は明らかにはなっていません。
しかし、他者からの社会的なサポートを受けることで食生活や健康習慣が改善されたり、孤立することからの恐怖から解放される可能性があるでしょう。
実際、社会的な孤立と食生活に関する41の調査をメタ分析した研究では、パートナーがいる高齢者と比較して、独身の50歳以上の高齢者は1日に食べる野菜の種類が約2.3種類少ないことが報告されています。
その理由として、料理をするスキルや調理をする意欲が不足していることと並び、一緒に買い物に行くパートナーがいないことが挙げられ、一人暮らしが健康状態の悪化に影響を与えていると言えるでしょう。
では、友達や知り合いをたくさん作り、人間関係を充実させればいいのでしょうか。
時間やリソースに限りがあるため、友達の数が多すぎると一人ひとりに時間を割くのが難しいでしょうし、少なすぎると人間関係の恩恵が得られないかもしれません。
その疑問に対する答えを示してくれるのが、2016年にニューヨーク大学のシェリル・カーマイケル氏らの研究です。
質の高い人間関係がのちの幸福度を高める
調査の対象になったのは大学生129名であり、それぞれの対象者を約30年に渡って追跡しました。
調査では、参加者が20代および30代の時に、1日に他者と交流する時間やその人数、他者との親密度、人間関係の満足度に関するデータを集めています。
そして30年後、50代になった参加者に孤独感と抑うつ傾向、主観的幸福感を尋ねました。
実験の結果、若い頃に友人の数が多かった人は50代になった時の幸福度が高い傾向にあることが分かりました。
しかし50代の幸福度が最も高くなったのは、20代の時点で友達が多く、30代の頃に友人の数が減った人だったのです。
このことから、20代では交友関係を広げ、30代には友人の数を絞り、人間関係の質を高めることで、その後の幸福度が高まる可能性があると言えるでしょう。