北朝鮮軍のロシア派兵がウクライナ情勢にとってゲームチェンジャーとはならないものの、ウクライナばかりか、欧州全土にも少なからず影響を与えることは必至だ。北朝鮮がウクライナ戦争に参戦したのだ。ドイツ外務省は23日、北朝鮮がロシアに兵士を派遣し、ウクライナでの戦闘に参加しているという報道を受け、ベルリンの北朝鮮代理大使を召喚した。同外務省はXで「もし北朝鮮がウクライナでのロシアの侵略戦争を軍隊で支援するなら、それは重大な事態であり、国際法違反である」と声明を出した。また、北朝鮮のロシア支援は「ドイツの安全保障と欧州の平和秩序をも直接的に脅かす」とも述べている。オーストリア外務省も同日、ウィ―ンの北朝鮮の崔康一大使(外務省前北米局副局長=Choe kang il)を召喚し、北朝鮮の派兵に対して懸念を伝えている。
ちなみに、ドイツは年内にも平壌の同国大使館を再開する計画だ。ドイツは2020年3月、北側が新型コロナウイルスの感染防止のために国境を閉鎖したことを受け、平壌の大使館を閉鎖し、中国の北京に移動した。しかし、今年2月、ドイツは10人から構成された使節団を平壌に派遣して大使館再開に向け準備している。北朝鮮がロシアに兵士を派遣したことを受け、ドイツ側の大使館再開が遅れる可能性がある。スウェーデンや英国など他の欧州諸国も平壌での外交活動を再開する準備を進めている一方、ロシア、中国、モンゴル、ベトナムは平壌の自国大使館を再開済みだ(「ドイツ、今秋にも平壌の大使館再開か」2024年3月15日参考)。
ウクライナのゼレンスキー大統領は北朝鮮軍の介入を「世界大戦への一歩」と警告を発し、ロシア側との停戦の見通しが更に遠ざかったと受け止めている。北朝鮮とウクライナは現在、敵対的な外交関係にあるが、その主な原因は、戦争における北朝鮮のロシア支援にあることはいうまでもない。この関係は2022年に北朝鮮がウクライナ東部のドネツク州とルハンシク州の分離地域の独立を正式に承認したことで大幅に悪化した。