ちなみに、バチカンのナンバー2、国務長官のピエトロ・パロリン枢機卿は2018年2月、イタリア代表紙ラ・スタンパとのインタビューの中で、「バチカンは中国の国家機関の改革を要求する考えはない。大切な点は信仰だ。バチカンは中国共産党政権といつまでも対立関係を続けていくことはできない」と述べたことがある。バチカン側は中国共産党政権に対するフランシスコ教皇の現実主義を擁護しているが、暫定合意で問題が生じた場合、バチカン側が最初に譲歩し、中国側の決定を受け入れることで問題を解決してきたパターンがほとんどだ。逆ではない。中国の地下教会の聖職者たちが心配する点はそこだ。
中国共産党政権の習近平国家主席は2012年に権力を掌握した後、「宗教の中国化推進5カ年計画」(2018~2022年)を実施した。「宗教の中国化」とは、宗教を中国共産党の指導の下、中国化すること(同化政策)だ。それは新疆ウイグル自治区(イスラム教)で実行されている。100万人以上のイスラム教徒が強制収容所に送られ、そこで同化教育を受けている。キリスト教会に対しては官製聖職者組織「天主教愛国会」を通じて、キリスト教会の中国化を進めている。中国共産党政権との対話では、‘キリスト教的な現実主義’がいつまでも通用することはないのだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年10月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。