ところで、ここにきて欧州居住の脱北者から新しい情報が流れてきた。金正恩総書記は米韓の暗殺計画から自身の身を守るために娘を“人間の盾”に利用している、という少々ショッキングな内容だ。
説明する。イスラエル軍と戦闘を繰り返しているパレスチナ自治区ガザ区を実効支配しているイスラム過激派テロ組織ハマスの戦略を思い出してほしい。イスラエル軍の砲撃から守るために、その拠点を病院や難民収容所の地下に構え、パレスチナ住民、女性や子供たちを“人間の盾”として利用している、といわれてきた。国連や人権擁護グループはイスラエル軍のガザ攻撃を批判、ブリンケン米国務長官はイスラエル側にガザ区の戦闘の抑制を要求している。
一方、金正恩氏は米韓両軍は有事の際に北朝鮮指導部の排除を目的とする「斬首作戦」を用意していることを知っている。実際、訪朝したボンペオ前米国務長官に「私を殺そうとしていることを知っている」と語ったという。ポンペオ前長官は2023年1月24日に出版した回顧録でこの話を明らかにしている。
北朝鮮は昨年11月、ロシアの技術支援を受けて初の軍事偵察衛星「万里鏡1号」の打ち上げに成功し、米国のホワイトハウスやペンタゴン(国防総省)を撮影したと発表、金正恩総書記は「大きな満足」を示したというが、米国の軍事偵察衛星(通称キーホール)は久しく朝鮮半島を偵察し、その画像の解像度は15センチともいわれている。キーホールは金正恩氏の官邸執務室はいうまでもなく、金氏の国内の移動を完全にフォローしている。金正恩氏は米偵察衛星キーホールの目から逃れることはできないのだ。
そこで金正恩氏は米軍の暗殺から逃れるために、ハマスと同様、自分の娘を盾にすることを考え出したのではないか。米国は金総書記に随伴する娘のジュエさんの方向にトマホークミサイルを撃ち込むことは躊躇せざるを得ないだろう。だから金正恩氏は外出する時には可能な限り娘を連れていくわけだ。人間の盾というわけだ。
子煩悩の父親の金総書記が暗殺されるかもしれない危険な場所に娘さんを連れることはないだろう、という声もあるが、金正恩氏が暗殺された場合、娘さんを含む金ファミリーの運命には過酷な運命が待っている。すなわち、金総書記にとって金ファミリーは運命共同体だ。だから、米軍の暗殺を阻止するために娘さんを動員することに大きな抵抗はないのではないか。
参考までに、金正恩氏には3人の子供がいるが、長男は先天的な障害をもっているといわれる。だから、父親を守る人間の盾役は長女のジュエさんに回ってきたというのだ。いずれにしても、米韓軍の特殊部隊の斬首作戦は金ジュエさんが父親と随伴していない時にしか実行できないのだ。いずれにしても、金ジュエさんの後継者説は依然、不確かというべきだろう。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年1月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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