バリ島の海岸侵食に関しては、JICAが海岸保全事業を実施しており注2)注3)、バリ島南部エリア(サヌール、クタ、ヌサドゥア海岸およびタナロット寺院)等において養浜、突堤、潜堤、離岸堤などの建設を支援し、各海岸の侵食軽減に寄与している。
今回、バリ島のクタ海岸に訪れ、海岸侵食対策やビーチ周辺の様子を調査した。
クタ海岸では海岸侵食の防止を目的として様々な対策が講じられていた。砂浜を保全するための砂の投入、また養浜砂の流出低減対策としての3基の離岸堤設置が行われていた(写真1)。
調査を行った時間帯はちょうど満潮の時間帯であり、クタ海岸の砂浜は海面下の状況であった(写真2)。
海岸侵食を始めとする国土保全事業は自然の影響に左右される。海岸侵食に対しても対策を講じているものの養浜砂が流出し続けているのが現実である。行政等の発注者は、一度、対策を講じたからといってそれで終わりという訳ではなく、事業効果のモニタリングや効果を持続させるための対策を常に考える必要がある。
また、クタ海岸周辺はビーチリゾートしての開発が非常に進んでおり、観光産業の過熱化により海岸の自然が破壊されているようにも感じた(写真3)。夕方になるとサンセットを楽しむ大勢の観光客がビーチに集まっていた。
3.マングローブ林による海岸浸食対策先述のクタ海岸の見学を通して、離岸堤では完全に砂浜流出を防ぐことはできないことを確認した。マングローブ林が海岸侵食対策に有効であるとのことからジャカルタ市内にあるマングローブ林を見学した(写真4)。
マングローブ林は、離岸堤と同様に波のエネルギーを吸収する効果があり、海岸侵食低減効果があると言われている注6)。
マングローブ林が自生している地域では、定期的な維持管理の手間は不要と思っていたが、今回見学したマングローブ林では、倒れている木や枯れた木も数本あった。また、外観では直立している木であっても、しっかりと根付いている保証はなく、全ての直立してる木が波に抵抗する能力を有している訳ではないことを知った。もし仮に、マングローブ林の管理を徹底するのであれば、樹木医等による診断や処置が必要になるだろう。