KRASの場合上記の変化が正常細胞の腫瘍化につながる。KRAS-G12RはステージIのがんでは約30%の頻度で見つかっているが、ステージII以上では約5%とそれほど高くない。どうもG12Rは細胞増殖に対する影響が、他のKRAS遺伝子異常に比べて小さいようだ。また、G12Rを持つがんは局所再発が多く、遠隔転移は少ないようだ。

KRAS阻害剤も変異のタイプによって効果は違うので、同じアミノ酸に遺伝子異常が起こっても、どのアミノ酸に変わるのかが違うとタンパク質の性質に違いが出てくるようだ。情報が増えてくると、同一の遺伝子であっても、どの場所でどのような変化が起こってくるのかによって、患者さんを層別化する必要性が明らかになってくる。

質のいいデータをできる限り多く収集して、人工知能が解析する。日本が再び輝くには、とにかくビッグデータだ。

編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2024年9月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。