欧州の経済大国ドイツの場合を考えてみたい。ドイツのランクは前回16位から24位に後退した。ドイツは世界第3位の経済大国だが、国民経済は現在リセッション(景気後退)でエネルギー代、住居費、消費物価は高騰し、国民の懐はけっして豊かではなくなった。鉄道、航空会社、農業関係者など様々な産業分野で賃金アップ、労働条件の改善を訴えるデモが起きている。要するに、ドイツを取り巻く経済、社会、そして政治環境は不安定となり、国民は生活をエンジョイできる環境にあるとは決して言えない。ドイツでは若者の満足度が47位と低い。

ただし、平均的ドイツ人の生活は他の地域の国民より数段恵まれていることも事実だ。ドイツの給料が自国のそれより高いのでドイツで職を探すオーストリア人も少なくない。国民経済は厳しくなったが、夏の休暇には必ず家族連れで旅行に出かける。生活水準自体は高い。ただ、そこに住む国民の満足度が低下しているのだ。同じように、米国は世界最大の経済国だが、そこに住む米国民の幸福度は15位から23位に後退している。衣食住を含む経済状況は人の幸福度とは必ず一致しているわけではないわけだ。

実際、毎年、中東・北アフリカ・アジアから多数の移民・難民がドイツを目指してくる。メキシコを含む南米からは米国に不法入国しようとする難民が多い。彼らから見たならば、米国やドイツは豊かな国であり、それを共有したいと願うわけだ。

幸福度は結局はそこに住む国民の満足度と関連してくるが、同時に、人間の基本的欲求が満たされている場合、という前提条件付きだ。「女性の権利」という基本的人権すら遵守されていないアフガニスタンが世界で最も不幸な国、幸福度最下位であるのは当然の結果といえる。参考までに、日本は51位、韓国は52位、中国は60位だった。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年3月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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