レストランでもそうです。最近行った2つの「繁盛していた店」でも、1軒は9時ごろには客は2組、もう1軒は9時にはゼロになってしまいました。そんな世相を受けてか、スーパーマーケットでも提示価格が明らかに下がっており、商品によっては何年か前に見た価格まで戻ってきているものもあります。目玉商品も増え、小売業者は苦戦しているのが実感として手に取るようにわかります。カナダでは1-2年前の狂乱物価は完全に通り過ぎています。
これら景気の実感は街角景気とも称するのですが、これが経済の統計に出てくるのは3か月ぐらいかかるのです。なぜなら「売れない」と感じ始めるのは店側が月次決算で締めた段階で実態を明白に理解するためで、その後に値下げなどの対策を施すわけです。統計とはそれら現場の経済行動を取りまとめたものです。もっと言えば中央銀行が「金融対策を行う」というのは更に3か月ぐらいかかります。
例えばパウエル議長は毎月の記者会見の際にある統計結果を受けてしばしば「この数字はひと月だけを見た場合なのでもう少し長い目で見ないとこれが異常値なのか傾向を示すのか判断できない」といいます。日銀の植田総裁も私が想像上の代弁をすれば「春に賃上げが行われた結果、物価高が家計でどの程度緩和されたかはもう少し様子を見ないとわからない」と言うでしょう。お2人とも確度を検証するスタンスです。その間に街角景気は悪化の一途を辿る、これがだいたいのシナリオで中央銀行が重い腰を上げた時は概して時遅しで慌てて連続利下げや大幅利上げをしなくてはいけないというのが過去繰り返されてきたことです。
カナダは既に利下げを開始し、中銀は引き続き利下げを継続することを視野に入れているようです。一方、日本は電気代の補助が切れたので国民が電気代の請求書を目にする7月ぐらいから物価に対する懸念は再度増大しそうです。訪日外国人が引き上げた物価と日本人が許容できる物価とは違うわけで、夏のレジャーなどに消費の影響が出てくる気がします。来週から東京と地方に行くので様子を見てきたいと思います。
ただ、個人的には日銀が金融政策の正常化をするのは正しいと思っています。今の金利水準はほとんどゼロの状態ですのでこれで利上げして実生活に影響するとすればそれはむしろ家計の支出スタンスが悪すぎたということかと思います。金利がない世界に慣れすぎた日本の方にはしばし向かい風かもしれませんが、ここは乗り越えるべきハードルだと考えています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年6月13日の記事より転載させていただきました。