イメージとしてCMDは「閉じ込め症候群(locked-in syndrome)」に近いと考えられます。
閉じ込め症候群の患者は、意識はあるものの、脳の機能障害により眼球運動とまばたき以外の意思表示ができない状態にあります。
意識や思考は鮮明でも、それが体の中に閉じ込められているように見えるのです。(ただCMDの場合は閉じ込め症候群ほど鮮明な意識や思考はないと考えられています)
これまでのところ、CMDについての体系的な調査はなされておらず、意識不明の患者においてどれくらいの割合で発生しているかも知られていませんでした。
そこで研究チームは今回、CMD研究における過去最大規模の調査を行いました。
昏睡患者の4人に1人は「意識」があった!
本調査では、複数国の6施設で収集された研究データを対象にしました。
これには脳損傷で昏睡状態や植物状態で無反応に陥っている患者241名(平均年齢37.9歳)のデータが含まれています。
実験者はこれらの患者に対し「手を開いたり閉じたりするイメージを持ってください」などの簡単な指示を行い、その際の脳活動をfMRIおよびEEGで測定しました。
脳損傷の原因が頭部外傷であったのは被験者の50%(残りは脳血管障害や脳腫瘍などが原因)で、脳損傷から調査実施までの平均期間は7.9カ月でした。
そしてデータ分析の結果、241名中60名(25%)が実験者の呼びかけに対して、観察可能な身体活動は示さなかったものの、脳内で反応する「認知と運動の解離(CMD)」が確認できたのです。
つまり、一見すると昏睡状態でも、本人には周りの声が届いているということでした。
またCMDを示した被験者は、年齢が若いこと、頭部外傷が病因であること、受傷後の経過期間が長いことと有意に関連していたといいます。
被験者の4人に1人がCMDを示したという結果は、これまでに認識されていたよりも多くの昏睡患者において、実は意識が持続しており、周囲の呼びかけに対して脳内で反応できている可能性があると研究者は述べました。