病床での呼びかけはしっかり届いているかもしれません。
このほど、米コロンビア大学アービング医療センター(CUIMC)らの研究チームは、重度の脳損傷で意識不明に陥った患者に「手を開いたり閉じたりして」と呼びかけ、その脳活動を測定。
その結果、4人に1人が呼びかけに反応した脳信号を示し、意識が持続していることが確認されたのです。
この発見は昏睡状態や植物状態に陥った患者の医療ケアに大きな変化をもたらすと期待されています。
研究の詳細は2024年8月14日付で医学雑誌『The New England Journal of Medicine』に掲載されました。
目次
- 意識はあるけど体は動かない「CMD」とは?
- 昏睡患者の4人に1人は「意識」があった!
意識はあるけど体は動かない「CMD」とは?
交通事故や転落、転倒、あるいは脳血管障害や脳腫瘍などで脳を損傷すると、意識不明の重体に陥ることがあります。
こうなると患者は医師や家族の呼びかけも聞こえず、まったく反応もできません。
この状態では声をかけ続けても本人には届かないのではないかと思うでしょう。
しかしこれまでの研究で、意識不明の昏睡患者に呼びかけを行い、そのときの脳活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)や脳波(EEG)で測定すると、稀に呼びかけに反応する脳信号が得られるケースがありました。
この状態を専門家は「認知と運動の解離(cognitive motor dissociation:CMD)」と呼んでいます。
認知と運動の解離(以下、CMDと表記)とはその名の通り、認知能力と運動能力の結びつきが切断されている状態を指します。
つまり、外部からの呼びかけは聞こえていて、頭でも理解できているものの、それに応答して、体で表現する運動能力は沈黙しているということです。