リベラルなメディアはハリスさんの演説を評価したが、ハリスさん独自の政策は見いだせなかった。ただ、ハリスさんの演説の中でトランプ氏への批判だけは元検事出身らしく厳しいトーンがあった。トランプ氏の支持者による2021年1月の連邦議事堂乱入事件に言及し、「トランプ氏の再選は深刻な結果をもたらす」と警告を発していたのが印象深かった。

党大会直後の各種の世論調査結果では、ハリス氏がトランプ氏を数ポイント、リードしている。ドイツでの電話調査によると、ドイツ国民の約90%がハリス氏の当選を希望しているという結果だった。ドイツではトランプ嫌い、民主党支持が強いから、調査結果はサプライズではない。

党大会では著名な俳優やスティ―ヴィー・ワンダーやピンクなどの歌手たちが総動員され、有名な司会者オブラ・ウィンフリーさん、オバマ・クリントン元大統領らがハリス支持を表明した。党大会は政治集会というより、エンターテインメントだ。ハリウッドスターのメッセージや有名な歌手たちの歌の合間に元大統領、ウォルズ副大統領候補者らの演説が入るといった感じだ。その点、前回の大統領選とは大きくは変わらないが、トランプ氏の再選を阻止するという目標で民主党大会はこれまで以上に団結している、という印象を受けた。

バイデン大統領が再選出馬を断念する前まで、米民主党は「もしトラ」の悪夢に悩まされてきた。バイデン氏の再選断念、ハリス氏の大統領候補が決まったことでトランプ氏を破ることが出来るのでは、という感触を得たのだろう。

一方、トランプ陣営はバイデン大統領からハリスさんに攻撃対象が変わったこともあって、選挙戦略に苦慮している。メディアを通じて聞こえる声は、ハリス氏は有色出身だ、左翼でリベラルな政治家だ、といった一辺倒な批判に終始。そのトランプ陣営の選挙戦に危機を感じた共和党議員や関係者から「選挙戦略を変えるべきだ」という声が出てきた。その一人、元米国連大使のニッキー・ヘイリー女史は右派系テレビ局フォックス・ニュースで、「ハリス氏がどの人種に属するかや、彼女が愚かだと批判することで選挙に勝つことはできない。アメリカ人は賢い人々だ。彼らに対して賢い人々として接するべきだ」と訴えていた。