そのため今回の結果は、これまでWIMPの可能性があると提示されてきた粒子や、関連する多くのアイディアを否定することになりました。

その中には宇宙には水素原子の10倍以上の重い暗黒粒子の対消滅で発光する「暗黒星(ダークスター)」が存在するとするアイディアも含まれています。

(※水素原子の10倍以下の軽い暗黒粒子で構成された暗黒星の可能性はまだ否定されていません)

ただLZチームのスポークスマンは「諦めるのはまだ早く、今回の結果によって暗黒物質の性質についてさらに厳しい絞り込みができるようになった」と述べると共に研究結果について「もしWIMPが魔法の魚ならば、私たちはこれまで海の75%を探索したことになる」と例えています。

さらに「暗黒物質を見つけられないことに関して私たちは世界一だ」と前向きなコメントを残しました。

というのも物理学の分野において「○○をみつけられないことに関して世界一」というような測定感度に関わる皮肉は、必ずしもネガティブなものにはなり得ないからです。

たとえば重力波の測定において近年大きな成果を上げているLIGOもかつては「重力波以外ならなんでも検出できる測定器」と、その高感度について皮肉を込めて呼ばれていました。

研究者たちは今後2028年に終了するまで合計1000日間の観測を行う予定です。

また現在、LZを遥かに上回る性能を持つ次世代検出器XLZDのプロジェクトも計画されています。

では、それでもWIMPがみつからなかった場合、どうしたらいいのでしょうか?

WIMPの否定は新理論の夜明けに繋がる

WIMPがみつからない場合、それは何を意味するのか?

答えの1つとして、暗黒物質には複数種類が存在しており、これら隠れた領域にいる粒子には既存の常識にない力や相互作用を行っている可能性があげられます。

そのため既存の理論的で予想される1平方センチメートルあたり毎秒10万個の暗黒粒子が通過するという前提そのものが崩れ、キセノンを利用した検出方法の有効性が大きく低下するでしょう。