1980年代以降の40年に及ぶ理論研究により、暗黒物質の最有力候補は「WIMP」であると予想されていました。

WIMPとは超対称性理論の考えとして提唱されている粒子です。

超対称性理論では宇宙の物質を構成するあらゆる基礎粒子には、その対称となる粒子が存在すると考えており、WIMPはその中でも最も軽く、その質量は水素原子の10倍から1000倍と考えられています。

また理論通りならWIMPは極めて弱い核力によってのみ通常の物質と相互作用し、1平方センチメートルの断面を毎秒およそ10万個のWIMPが通過していると考えられていました。

そのため十分な感度を持つ検出器ならば、その存在を観測できると考えられていました。

しかし既存の検出の試みは全て失敗しており、WIMPの存在を疑う声も出始めています。

そこでアメリカでは、これまでで最も高感度な検出器としてLUX-ZEPLIN(LZ)が建設されました。

LZはマイナス98℃まで冷却された7トンの液体キセノンに満たされた巨大容器と494個の光センサーから構成されており、放射線から保護するため地下1.5kmに設置されています。

理論通りならばWIMPはマイナス96℃のキセノンと相互作用するはずです
理論通りならばWIMPはマイナス96℃のキセノンと相互作用するはずです / Credit:Status of the LUX-ZEPLIN Dark Matter Experiment

WIMPが理論通りの性質を持つならば、上の図のようにキセノン原子核に衝突した時に光を放出するはずだからです。

LZは2022年に初のデータ取得フェーズを完了し、現在においても探索が続けられています。

しかし2024年8月26日に発表された報告によれば、280日間の探索でも、WIMPが全く検出できなかった、とのこと。

さらに衝撃的だったのは、今回の調査によりWIMPは高い確率で、水素原子の10倍を超える質量ではないことが示されたことにあります。

先に記した通り、これまでWIMPの質量は水素原子の10~1000倍であると考えられていました。