元旦に発災した「令和6年能登半島地震」をめぐる報道のあり方が話題になっている。その論点は防災専門家らに委ね、ここでは以下、北朝鮮関連の報道を俎上に載せよう。

昨2023年11月21日、政府は全国瞬時警報システム(Jアラート)を配信し、「北朝鮮からミサイルが発射されたとみられる」としたが、その後「ミサイルは太平洋上へ通過したとみられる」と解除した。

この間、すべてのテレビ局の画面が関連ニュース番組に切り替わったことは記憶に新しい。

このときは、当局の情報分析も混乱した。翌22日未明、宮沢防衛副大臣(当時)は防衛省で記者団に「地球の周回軌道への衛星の投入は確認されていない」と述べた(その後、米軍オスプレイ墜落を「不時着水」と言い張り、派閥の裏金問題を暴露した人物である)。

他方、北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、衛星「万里鏡1」の軌道投入に成功したと「報道」(発表)。韓国軍や米軍も、同様の見解を示した。

そこで発射から三日後の24日になって、ようやく木原防衛大臣が記者団に、「アメリカや韓国と連携し、分析を進めた結果、北朝鮮が発射した何らかの物体が地球を周回していることを確認した」と見解を修正した(ただし防衛省サイト「お知らせ」欄では「現時点では地球周回軌道への衛星の投入は確認されていません」との22日付「続報」がいまも掲載)。

同様の不手際は、今年1月14日の北朝鮮弾道ミサイル発射でも再現された。当日の防衛省発表を受け、公共放送NHKは「短距離」と見出しで報じたが、お隣の韓国軍は即座に「中距離弾」と分析。当の北朝鮮も、「極超音速機動型操縦戦闘部を装着した中長距離固体燃料弾道ミサイルの試験発射を行った」と認めた(「労働新聞」15日付・強調は潮)。

けっして重箱の隅をつついているわけではない。そもそも「短距離」なら、まず日本には届かない。それゆえ、北朝鮮のミサイルが短距離なのか、それとも中長離あるいは長距離なのかは、日本の安全保障にとって死活的に意味が異なる。

残念ながら、当日発射された新型ミサイルの脅威が喧伝されるようになったのは、朝鮮半島から正しい情報が伝えられて以降である。同様に、昨年12月8日の北朝鮮による、固体燃料型大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射でも、情報が錯綜した。

以上の問題点も重大だが、ここでは報道のあり方に論点を絞ろう。

改めて確認したい。上記のとおり、昨年11月の際は、全局の番組が関連報道番組に切り替わったが、翌12月の発射の際も、今年1月の発射でも、テレビ画面の上部や左端などに「北朝鮮が弾道ミサイルを発射」などの文字情報をテロップとして掲載しただけで、ドラマやバラエティ番組は中断されることなく放送された。