加糖飲料を飲みすぎる健康リスク
調査の結果分かったのは、加糖飲料をよく飲んでいる人たちは慢性腰痛を抱えている傾向があるということです。
具体的な数値を言うと、加糖飲料を全く飲まない人に比べると、1日当たり200kcal以上飲んでいる人たちでは、慢性腰痛を抱えがちという結果が得られています。
一例として、サイダーには100mL中に砂糖類が約10g(40kcal)含まれており、500mlのペットボトルを1本飲むと、それだけで砂糖類の摂取量は50g(200kcal)に達します。
研究グループは、加糖飲料を飲んでいる人たちで慢性腰痛を抱えがちな傾向があった理由について、炎症、代謝、栄養、生活習慣および心理的要因の関与を挙げています。
例えば、加糖飲料に含まれる砂糖類は、体内の炎症レベルを高めてしまうため、慢性腰痛をはじめとする身体に痛みを生む症状を悪化させる可能性があります。
また、加糖飲料をよく飲む人たちは、座りがちな生活習慣やストレスを抱えている傾向があり、これは慢性腰痛へのリスク要因となります。
反対に、加糖飲料を控え、水、炭酸水、緑茶、麦茶、ハーブティーなどを選ぶことで、腰への負担にも関わる体重管理の手助けにもなります。
ただ、今回の研究は、あくまでも加糖飲料の摂取量と、慢性腰痛に着目した統計研究であり、両者の因果関係を明らかにしているわけではありません。
そのため確実なことを言うためには、加糖飲料で本当に腰痛が悪化するのか? という因果関係を明確にする追加の調査が必要であると研究グループは述べています。
一方で、2023年にはブラジルのマラニャン国立大学(Federal University of Maranhão)に所属する研究グループらから、6000人以上を対象とした研究において、加糖飲料の摂取が多い人の腰椎の骨密度が低いことも報告されており、加糖飲料の飲みすぎが腰に負担を与えることを示唆する別の報告も存在します。
また、加糖飲料の飲み過ぎは、慢性腰痛以外にも、肥満や糖尿病、慢性腰痛病などの健康リスクを高めるため、加糖飲料の飲みすぎに気を付けた方が良いことは間違いありません。
ちなみに、こういった加糖飲料に関する研究では、仮に糖分が含まれていても、ビタミンやミネラルなどの健康にプラスの効果が期待できる栄養素を多く含む牛乳や100%ジュースなどは加糖飲料とは扱われていません。
実際、2024年に入って発表されたイギリスの長期大規模バイオバンク研究「UKバイオバンク」の成果を見ても、加糖飲料から100%ジュースに変えることで、新たな国民病とも呼ばれる慢性腎臓病のリスクが減らせる可能性も示されています。
以上、近年発表された一連の研究を踏まえると、加糖飲料を飲み過ぎている人たちは、飲み物の選択を工夫することで、腰痛や全体的な健康状態の改善が期待できるでしょう。
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参考文献
「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/index.html
「嗜好飲料(アルコール飲料を除く)」(厚生労働省e-ヘルスネット)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-03-014.html
元論文
Sugar-sweetened beverage intake and chronic low back pain
https://doi.org/10.3389/fnut.2024.1418393
High Consumption of Sugar-Sweetened Beverages Is Associated with Low Bone Mineral Density in Young People: The Brazilian Birth Cohort Consortium
https://doi.org/10.3390/nu15020324
Sweetened Beverage Intake and Incident Chronic Kidney Disease in the UK Biobank Study
https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2023.56885
ライター
髙山史徳: 大学では健康行動科学、大学院では体育学・体育科学を専攻。持久系スポーツの研究者として約10年間活動。 ナゾロジーでは、スポーツや健康に関係する記事を執筆していきます。 価値観の多様性を重視し、多くの人が前向きになれる文章を目指しています。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。