2024年8月24日、フランス・パリ郊外の空港で通信アプリ「テレグラム」の創業者、フランス系ロシア人のパべル・ドゥロフ氏が逮捕されたことが国際的に報じられました。逮捕容疑はアプリを通じた詐欺や麻薬行為、テロ行為の助長などを放置した疑い。

「テレグラム」はしばしば犯罪の温床のアプリとして、各種報道などで指摘されることがあります。たとえば2020年には、韓国で集団性犯罪事件「n番部屋事件」が明るみとなり、その通信アプリとして使用されたのはテレグラムでした。

日本国内でも闇バイトでテレグラムが使用されていると報じられています。とはいえ意外とわかりづらいのは、テレグラムは「テレグラム自体が危険なのか」「テレグラムで行われる一部のやり取りが危険である」のか。

今回はテレグラムは「見るだけ」「登録するだけ」でも危険なのか、解説します。結論から言えば、テレグラムには「The New York Times」などのチャンネルも用意されており、テレグラムそのものが危険とは必ずしも言えません。一方で、LINEやDiscordなどではなく「テレグラム」を使うコミュニケーションには危険な目的のものが多いのもまた事実であると言えます。

テレグラムとは?基本的な機能

テレグラムは一言で言えば「高度な暗号化が特徴のメッセージアプリ」であり、代表的な機能には「シークレットチャット」が挙げられます。

テレグラムのシークレットチャットは一定時間経つとやり取りが自動で消去されるのが特徴。自動消去後の復元は難しく、なおかつ内容はエンドツーエンド暗号化が適用されているため、外部からの解読が難しくなります。やり取りしている当事者以外は、テレグラムの運営者も含めて誰もその内容を見ることはできません。

意外と知らない「テレグラム」は見るだけ、登録するだけでも危険なのか
(画像=『オトナライフ』より 引用)

より詳しくテレグラムの代表的な機能の例を見ていきましょう。

シークレットチャット

意外と知らない「テレグラム」は見るだけ、登録するだけでも危険なのか
(画像=『オトナライフ』より 引用)

先述した通り、シークレットチャットはメッセージが高度に暗号化される機能で、送信者と受信者以外はメッセージの内容を読むことができません。さらに、メッセージの自動削除機能も備えており、指定した時間が経過すると自動的にメッセージが消去されます。ログは運営のサーバーにも保存されないため、完全秘匿となります。

なお、シークレットチャットはスクリーンショットを撮影できないうえ、スクショを撮影しようとしたことがメッセージ上に表示されてしまいます。いわゆる「闇バイト」で利用されるケースが極めて多いのも、このシークレットチャットです。

スーパーグループ

スーパーグループは複数人が参加できるグループ機能であり、最大20万人まで参加可能な点が特徴。管理者は参加者の権限を細かく設定でき、効率的なグループ運営が可能です。なおテレグラムのグループ機能は、シークレットチャットと比較した際に高度な暗号化はされていません。

チャンネル

チャンネルは、一方向の情報発信に特化した機能です。チャンネル管理者のみがメッセージを投稿でき、フォロワーはそれを閲覧するという形式になっています。登録者は、チャンネルのメッセージを閲覧することはできますが、返信することはできません。

テレグラムが提供する「高度な暗号化」の意義

テレグラムにはグループやチャンネルといった機能もありますが、やはり最大の特徴は極めて高度な暗号化が施されている「シークレットチャット」です。高度な暗号化が施されているメッセージアプリには、テレグラムの他にも「シグナル」などがありますが、テレグラムは大きくユーザー数で勝っています。

意外と知らない「テレグラム」は見るだけ、登録するだけでも危険なのか
(画像=『オトナライフ』より 引用)

高度な暗号化が施されているメッセージアプリは、検閲が厳しい国や、戦時中の国においては特に貴重な連絡手段となり得ます。

たとえばウクライナ侵攻では、ウクライナの行政当局が空襲警報の発令状況をテレグラムで国民に向けて発信。戦争や空襲警報に関するやり取りにおいて、ウクライナ国内ではなくてはならないコミュニケーションツールとなっています。

一方でロシア国内でも、テレグラムは国民の間で使用されています。2022年7月時点でロシア国内の月間利用者数は3500万人超。その理由の一つにはやはり高度な暗号化を実現したうえで、検閲などに対して断固反対する姿勢を明示していることが挙げられます。

つまりテレグラムには「犯罪の温床としての一面」だけでなく「言論の自由を守るメッセージアプリとしての一面」があるということです。事実として欧米メディアもテレグラムでチャンネルを立ち上げ、情報を発信しているケースが見受けられます。

意外と知らない「テレグラム」は見るだけ、登録するだけでも危険なのか
(画像は「The New York Times」テレグラム公式サイトより引用)(画像=『オトナライフ』より 引用)

たとえば「The New York Times」はテレグラムのチャンネルを運営中。国際情勢、政治、経済、文化など、幅広いトピックについて最新のニュースが配信されています。検閲が厳しい国や戦時中の国の国民にとっては、テレグラムでニューヨークタイムズの情報に触れられることは「貴重な情報収集手段の一つ」だと言えるでしょう。