NHKなりに検証した、優れた調査報道

 今回の放送内容について、元日本テレビ・ディレクター兼解説キャスターで、上智大学文学部新聞学科教授の水島宏明氏は次のように評価する。

「なぜテレビ界はジャニー氏の性加害を止めることができなかったのか、どこに問題があったのかということについて、すでに明らかになった事実を前提として、NHKなりに検証した、優れた調査報道だと評価できます。そう評価する理由は主に2つで、1つは、NHK元理事でジャニーズに移った人物に取材を行い、事務所を通じて本人のコメントを得ているという点。もう1つは、事務所初期を知る初代ジャニーズのメンバーの家族やフォーリーブスのメンバーに直接話を聞き、歴史的な振り返りを交えて芸能界にどのような背景があったのかを検証している点です」

 NHKは今月、スタート社所属タレントの番組起用を再開すると発表したばかりだが、このタイミングでこのような特集を放送したことについて、局として何らかの意図を持って時期を合わせたのではないかという見方もある。

「起用再開の発表と今回の『NHKスペシャル』放送という2つの事柄は、関係があると考えられます。NHKはいったんは旧ジャニーズの所属タレントの起用を自粛しましたが、旧ジャニーズによる被害者への補償がどこまで進んでいるのかということなどを判断基準として、再開するタイミングを見計らっていたのは事実でしょう。そして再開に当たっては、国民から広く受信料を徴収する立場である以上、NHKが自身の責任をどう捉えているのかを視聴者に説明する責任があり、その説明の一つに今回の『NHKスペシャル』があると考えられます。

 放送内容について事前にNHKの経営陣や理事、制作局長のレベルにまでチェックを受けたのかは分かりませんが、少なくても制作を司る『NHKスペシャル』事務局の責任者まではチェックを受けて承認を得ていると思われます」