今月、旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.<スマイルアップ>)からマネジメント業務などを引き継いだSTARTO ENTERTAINMENT(スタートエンターテインメント、以下スタート社)の所属タレントの番組起用を再開すると発表したNHK。そのNHKが今月20日に放送した『NHKスペシャル ジャニー喜多川 “アイドル帝国”の実像』に、高い評価が寄せられている(再放送は10月24日午前0:40~)。ジャニーズ事務所の創業者・故ジャニー喜多川氏による性加害問題を特集したものだが、フォーリーブスの江木俊夫氏(72歳)や、ジャニー氏から被害を受けていた初代ジャニーズの中谷良氏(2021年に死去:享年74歳)の姉へのインタビュー取材を実施。また、NHK元制作局長・元理事で在籍中はジャニーズ事務所と太いパイプを持ち、NHK退社後はジャニーズ事務所に移った若泉久朗氏への直撃取材も行い、後日書面で「幅広い世代層を獲得するために 旧ジャニーズ事務所は重要なパートナーの一つで NHKが支持される重要な役割を担ってもらいました」という証言を引き出すなど、NHK自身の過去にも切り込んでいる。専門家は「優れた調査報道」だと評価する。

 ジャニー氏(2019年7月に死去)の性加害が社会的に大きな問題となったきっかけは、昨年3月に英国公共放送(BBC)が放送した特集番組だった。テレビ各局は当初、沈黙を続けていたが、被害を受けた元ジャニーズJr.の男性が日本外国特派員協会で会見を開いたことで、徐々にテレビでも報じられるようになり、同事務所に対する批判が拡大。同社は再発防止特別チーム(座長:林眞琴元検事総長)を立ち上げ、調査報告書を公表。藤島ジュリー景子氏は社長を退任し、東山紀之氏が社長に就任。同社は補償業務のみを行うスマイルアップに社名を変更し(将来的には廃業の予定)、所属タレントのマネジメントは新会社・スタート社に引き継がれることになった。

「なんで僕なんですか? しかも仲間じゃないですか」

 今回の『NHKスペシャル』は、当時を知るテレビ局の元社員や元ジャニーズ事務所社員、ジャニー氏と姉で元会長のメリー喜多川氏と親交があった人物などの証言も交えて、ジャニー氏による性加害の実態と、テレビ界がその問題を見過ごしてジャニーズ所属タレントを起用し続け事務所の成長を招いた構造的背景を検証するもの。その検証の矛先はNHK自身にもおよび、NHKが積極的にジャニーズ所属タレントを起用するに至った経緯などにも言及している。

 なかでも視聴者から驚きを持って受け止められているのが、NHK元理事で現在はスタート社の顧問に就いている若泉氏への直撃取材だ。若泉氏は「なんで僕なんですか? しかも仲間じゃないですか。僕個人で今、ここで語ることはできない」と話し、後日、スタート社を通じてNHKに対し以下の回答を寄せている。

「NHKへの接触者率が減少し続け このままでは将来 公共放送として生き残れるか という危機感が広がっていました NHKはもっと幅広い視聴者層に見て頂き、信頼を高めることを経営計画に定めました  幅広い世代層を獲得するために 旧ジャニーズ事務所は重要なパートナーの一つで NHKが支持される重要な役割を担ってもらいました」