起死回生の道はあるのか?

そんな中国経済に起死回生の妙案はあるのでしょうか?

中国労働経済の第一人者が「農村出身で農村戸籍のまま都市に住んでいる<民工>と呼ばれる人たちに都市戸籍を与える改革で、消費は激増し、中国経済は高成長を取り戻せる」と主張して話題になっています。

結論を言えば、非の打ちどころのない正論です。中国は今、「有効需要を持つ人口」の激減に悩んでいます。農村部から都市部への人口移動によって、現在の中国は次のような人口構成になりました。

都市部の人口は農村部の人口の2倍を超えていますが、そのうちほぼ半分は農村戸籍しか持っていないので、何十年都市に住み続けていても政治・社会的には農村に住んでいて都市には出稼ぎに来ているだけという身分に据え置かれています。

彼らの大部分は安定した仕事に就くこともなかなかできず、マンションや自動車を買うような都市戸籍の持ち主なら当然できるようになったこともできない状態にいます。

農村戸籍の都市居住者同士が結婚して子どもが生まれても、その子は近所の公立小中学校には通えず、授業料は高くて教育の質は落ちる私塾に通わせるか、親元(子どもにとっては祖父母の家)に送ってそこで公立学校に通わせるかという不便な境遇です。

つまり、現在の中国で満足な都市生活を送るための有効需要を持っているのは、都市生活者9億2000万人全員ではなく、その半分の4億6000万人程度なのです。

農村戸籍の都市居住者に都市戸籍を与えれば、消費がものすごい勢いで活性化するのは確実です。ただ、この改革は国有企業系列とともに、2大既得権益集団を形成している都市戸籍を持つ都市居住者の既得権益を大幅に縮小します。

そうなったとき、彼らはおとなしく共産党一党独裁政治を支持しつづけてくれるでしょうか? まず無理だと思います。

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編集部より:この記事は増田悦佐氏のブログ「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」2024年1月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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