判例を検索すると、「入札」は地方自治法上の「入札」に限定されるものではなく、「競争入札の実質を保有する」随意契約も含まれる、と判示する昭和30年代の最高裁判決(昭和33年4月25日)が出てくる。いわゆる「見積り合わせ」のような随意契約も同罪にいう「入札」として扱われる、ということだ。

本件は公募型プロポーザル(事業提案)型の随意契約と聞く。その中で価格を一要素として勘案するというものだったようだ。調達であれば価格の安さで競い合うが、これはKKRの土地を賃借する業者の競争なので価格が高いほうが有利になる。

以下、各々のポイント(「公」、「入札」)について簡単にコメントしておく。

「公」について。みなし公務員規定があればその組織は「公」と評価されるのか、否か。後者であるならば、何が求められるのか。東京五輪組織委員会もその根拠法にはみなし公務員規定があったが、入札妨害の事案としては扱われなかった。官製談合防止法違反の射程との比較は重要だ。公共工事入札契約適正化法にも官製談合防止法と同様に「特殊法人」の射程が定められているが、その書き振りは異なっている。

「入札」について。競争性の有無と程度でいえば、特命随意契約から条件のない一般競争入札(全く条件がない入札は実際上ないが)までさまざまなタイプがあり得る。競い合いの対象でいえば価格だけをみるタイプ(最低価格自動落札方式)もあれば、価格とその他の要素を総合的に評価するタイプ(総合評価方式)のものもある。企画競争型の随意契約では価格以外の要素だけで評価するタイプが主流である。

上記最高裁判決を読む限りでは、最低価格自動落札方式の競争入札以外にも、総合評価方式型の競争入札と価格を中心的な要素とする随意契約が「入札」に含まれることがわかるが、その他の場面についての線引きはどこにあるのか。価格が中心的な要素となっていない、あるいは価格以外の要素だけで判断する企画競争型の随意契約について、判例上はっきりしない部分は確かにある。

公契約関係競売入札妨害罪は、公の契約における契約者選定手続における競争機能を妨げたことに対する非難にその根拠があるのか、国民の競争への信頼に反したこと(競争の体裁とその実質の乖離を作出したこと)に対するそれに根拠があるのかは別にして、契約相手を決める上で重要なのは競争なのだ、というのであればその射程は広がるだろう。一方、価格に重点を置けば置くほどその射程は狭まるだろう(しかし、本件は価格面に対する恣意的なやりとりがあったといわれている)。

これらのテーマについて、裁判所の判断が示された段階で改めて論じてみようと思う。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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