ドイツのメディアは22日、独サッカー連盟(DFB)の話がウクライナ戦争とパレスチナのガザ戦闘を凌ぐほどのビックニュースとして報じた。DFBの突然の決定は単にサッカーファンだけではなく、ドイツの政治家も巻き込む波紋を投じたのだ。
具体的には、DFBが21日、長年のパートナーであるアディダスとのサプライヤー契約が満了した後、2027年から米国のライバルであるナイキに変更すると発表したのだ。DFBのこの決定は予期しないものだったので、関係者は驚いた。
DFBの決定はスポーツジャーナリストだけではなく、政治家をも巻き込む大きな出来事となった。DFBがサプライヤーの変更の第一の理由がナイキがアディダスより倍の契約金を払う事で、これが分かると、サッカー界の「コマーシャリズムと愛国心」の関係といった哲学的なテーマまで飛び出してきた。
米国のスポーツ用品メーカー「ナイキ」との提携は2027年1月に始まり、2034年まで続く予定だ。ナイキはこの期間中、すべてのドイツ代表サッカーチームに装備を提供することになる。DFBのベルント・ノイエンドルフ会長は「ナイキと協力し、我々に寄せられる信頼を楽しみにしている」と語った。
DFBの決定がドイツで6月に開幕される欧州サッカー連盟(UEFA)主催の欧州サッカー選手権の直前に下されたことから、スポーツ記者の中には「タイミングが悪い」という声が聞かれる。ホストのドイツチームは依然アディダスのユニフォームを着用して試合に臨むことになる上、宿舎など関連施設はアディダスが準備したものを利用することになるからだ。
ロベルト・ハベック副首相(経済相兼任)は、「3本線のないドイツのジャージを想像することはほとんどできません。私にとって、アディダスと黒、赤、金は常に一緒のものだった。ドイツ人のアイデンティティの一部だ」と述べ、「DFBには愛国心がもう少し欲しかった」と語ったというのだ。カール・ラウターバッハ保健相(SPD)は、「アディダスはもはやサッカーの代表ジャージであるべきだ。米国の会社?商業が伝統と家庭を破壊するのは間違った決断だと思う」とX(旧ツイッター)に書いている。
独大衆紙ビルトによると、バイエルン州のマルクス・セーダー首相(CSU)は、「ドイツサッカーは純粋な祖国であり、国際的な企業闘争の駒ではない」と指摘。CDUのフリードリッヒ・メルツ党首は、「DFBの決定を理解できない。非愛国的だ」と酷評している、といった具合だ。
アディダスとプーマは兄弟会社のスポーツ用品販売会社で世界的に有名だ。だから「ドイツの高品質のシンボルとして世界に宣伝してほしい」と考える政治家が多い。それをDFBが突然、ライバル会社の米会社ナイキに変更したというわけだ。ただし、契約金が年5000万ユーロだったアディダスの倍、年間1億ユーロ以上と推定されている。契約金の違いは大きい。DFBも最近は赤字経営だといわれている。愛国心だけではもはや十分ではないというわけだ。