本来、会社への帰属意識や文化理解は同じ価値観を共有する人の中に身を置くことで作られる。人間は意識、無意識に関わらず環境からとてつもない影響を受ける動物である。成績不良の学生が予備校に通い、周囲が平気な顔をして毎日長時間机に向かう環境に身を置くと触発されて勉強家になるという話は誰に対しても説得力があるだろう。

つまり、リモートワークはどこまでいってもソロプレイとしてのワークスタイルであり、物理的距離を置くことで企業文化に根ざして働く意識的コミットメントの低下は避けられない。加えてチームワークがやりづらい働き方であり、効率が悪いから辞めるべきという結論が出てしまったのだ。

以上の理由から、米アマゾンCEOはリモートワークを廃止したものと考えられる。本記事のコメントに「アマゾンの誤った判断で優秀な人が退職してしまう」というものがあった。しかし、このコメントは的を得ていない。会社はチーム戦かつ企業文化理解を求めるので、ソロプレイで優秀な人ではなくチーム戦で優秀な人を求めている。会社はリモートワーク廃止の判断で退職する社員を必要としなくなったのだろう。

リモートワーク前提の人生はリスク

世界トップ企業を中心に次々とリモートワークが解除されていく中で、その逆にリモートワークを推進する企業もある。たとえば昨今、企業は管理部門を持たず外注を選択するところもある。給与計算、経理財務の仕訳作業などはリモートできるところも増えた。

しかし、今後の長期トレンドで考えると現在リモートワークを許す企業も廃止を決断する可能性は十分に考えられる。そのため、地方移住するなど、リモートワーク前提で人生設計をするのはかなりリスキーと言わざるを得ない。データドリブンの世界トップ企業が出した「リモートワークは効率が悪い」という結論はとてつもない重みであり、他の企業もこの流れに追従することは火を見るより明らかだ。