好奇心は外から提供できないし、その逆に誰も止めることができない。

体験格差より愛情格差

個人的には体験格差より、親の愛情格差の方が圧倒的に強い影響を与えると考える。

体験格差は大人になってから取り戻してもよく、元来子供が持っている強い好奇心は自ら開拓する強さに任せればいいと考えることはすでに述べた。その一方で愛情格差はまさに人生への決定的な影響があると思っている。

筆者は経済的には恵まれなかったが、祖父母と母親からの愛情はしっかり受けて育った。他の子に比べてお金がないことは肌感覚でよくわかっていたがそれを卑屈に思うことはなかった。また、他の人が長期休みに留学や家族で海外旅行へいったという話を聞いたら、「お金がない自分はしっかり勉強をして、学校からの資金援助でいってやる!」という負けん気が生まれ、実際にその通り実行できたことが後に強い自己肯定感につながっている。

そして仮に文化的な体験が十分充足していても、そこに家族の愛がなければ何の意味ももたらさない。たとえば両親がケンカをして無言のまま観光地を周るような時間が流れるなら、文化体験どころではなく、むしろそんな体験はトラウマでしかないだろう。

文化的体験が意味を持つのは、その前提に安心して体験に集中し、そこから学びや好奇心に触れられる精神的安寧、つまり愛情がしっかりかけられていることが絶対的に必要になる。子供に必要なのはまずはしっかりした親の愛情という土台であり、筆者は体験格差より愛情格差の重要性を強く主張したい。

よく「愛情にもお金がいる」という話があるが、薄給と愛情は成立できる。もちろん、所得が少なければともにすごす時間は限定的になり、親の精神的安定にも影響はするものの、それでも子供は親からの愛情を正確に感じ取る天才であり、さらに愛情は量より質が重要だ。文化体験の前にまずは愛情だと思うのだ。

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