つまり花はアミロイドベータの供給源にもなっていたのです。
研究者たちは、この奇妙な構造を「PANTHOS」と名付けています。
これはギリシア語で「花」を意味する「アントス(Anthos)」から作った造語で、「毒のある花」を意味しているようです。
(アントスは特に黄色いセキレイを指すと言われる。「PANTHOS」の読みはパントスになると思われるが、公式な日本語読みはまだ示されていない)
まとめると、アルツハイマー病では
・脳細胞内部の分解屋(リソソーム)の酸性度の喪失が先行して起こる
・酸性度の喪失が「毒の花」を形成させる
・最後に「毒の花」がアミロイドベータを蓄積させる
という経過を経ていた可能性が示されたのです。
アミロイドベータの蓄積は真の原因ではなく結果に過ぎない
今回の研究により、アルツハイマーを発症したマウスの脳細胞ではアミロイドベータの蓄積に先立ち、細胞のゴミ処理能力が失われていることが示されました。
追加の調査では、分解屋(リソソーム)が酸性度を失ってから最初のアミロイドベータが細胞外に沈着するまでの期間を調べたところ、なんと4カ月ものタイムラグがあることも判明します。
これらの結果は、アミロイドベータの蓄積よりも「かなり前」にアルツハイマー病による変化が始まっており、アミロイドベータの蓄積は真の原因ではなく、結果に過ぎない可能性を示します。
さらに研究者たちがアルツハイマー病で亡くなった人間の脳を調べてみたところ、マウスと同様の「毒の花」が存在していることが判明しました。
そのため研究者たちは、今後のアルツハイマー病の治療薬を開発する場合には、既存の薬のようにアミロイドベータの蓄積を防ぐのではなく、分解屋(リソソーム)の酸性度を回復させることに焦点を当てるべきであると結論しています。