伝説の女預言者が根城にしていた地獄へ繋がる洞窟は本当に存在するのか。研究チームの10年間に及ぶ調査で明らかになった驚きの事実とは――。

地獄に通じる“シビュラの洞窟”は実在するのか

 世界中の宗教と神話に“地獄”の概念がある。天上にある天国とは対照的に、地獄のイメージは地下深くにある“灼熱地獄”として描かれることが多い。この世のどこかの地中深くに地獄は存在するのだろうか。

 イタリア・ナポリの西側に広がる「フレグレイ平野(Campi Flegrei)」は、多数の火砕丘を含む長さ13キロメートルにおよぶカルデラ地帯である。カルデラ内にはポッツォーリなどの都市があり約50万人が暮らしているが、実は再び大規模噴火を起こす可能性がある不気味な超巨大火山帯でもあるのだ。

地獄への入り口「シビュラの洞窟」は存在した!?有毒ガスと熱湯の“灼熱地獄”
(画像=フレグレイ平野 画像は「Wikipedia」より、『TOCANA』より 引用)

 西暦79年にポンペイを襲う大噴火を起こしたヴェスヴィオ山からそう遠くない古代の火山カルデラ台地であるフレグレイ平野は、蒸気や炎を吹き出す噴出孔、硫黄を噴出するクレバスなどが随所にある危険な活火山地帯である。

 この地はギリシャ神話とローマ神話にもよく登場しており、太陽神アポロによって不死と預言の力を授けられた女預言者、シビュラ(sibyl)はフレグレイ平野のどこかにある冥界への入口としても機能する洞窟に住んでいたといわれている。

地獄への入り口「シビュラの洞窟」は存在した!?有毒ガスと熱湯の“灼熱地獄”
(画像=シビュラ 画像は「Wikipedia」より、『TOCANA』より 引用)

 何世紀にもわたって好奇心に駆られた探検家や研究者がこの地を訪れて“シビュラの洞窟”を探したのだが、さしたる成果が得られなかった。

 しかし1950年代にイタリア人考古学者、アメデオ・マイウリの調査チームが古代ローマのリゾートタウンであったバイア(Baiae)の遺跡を調べたところ、これまで知られていなかった洞穴の入口を発見した。明らかに大昔に人為的に作られたもので、マイウリらは中へと入ってみたものの、苛烈な熱気と渦巻く危険な火山ガスのためそれ以上の調査は断念を余儀なくされた。