その後も企業向けソフトウェア を開発する新興企業を相次いで買収したり、金融業界などで経験を積んだ人材を積極的に採用したり、先端研究部門をビジネス志向に方向転換させるなど、ソフトウェア・サービスの強化を続け、今ではこの分野が全売上高のおよそ8割を占めるほどになっている。

2003年から2012年までの9年間の会長就任期間中に、ハードウェアメーカーだった巨艦IBMを、ソフトウェア・サービスが売り上げの8割を占める企業に転身させた舵取りは注目に値する。

拙著「国破れて著作権法あり~誰がWinnyと日本の未来を葬ったのか」第1章「シリコンバレーの興隆と日本の停滞」で、インターネットの入り口であるブラウザー(閲覧ソフト)を開発した天才プログラマー マーク・アンドリーセン氏の話を紹介した。

アンドリーセン氏は、2011年8月20日付、ウォールストリートジャーナル紙に「なぜソフトウェアが世界を飲み込むのか」というタイトルの寄稿文を寄せた。

その8年前の2003年に会長に就任してソフトウェア企業に巨艦の舵を切ったパルミサーノ氏の先見の銘に驚かされる。

なぜ日本にはGAFAが生まれないのか

3/26毎日新聞夕刊の「なぜ日本にはGAFAが生まれないのか 波風嫌う昭和の体質」と題するインタビュー記事で、グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎氏も渡辺氏と同じような指摘をする。

日本の大きな病は、現状変更や波風が立つことを嫌うことです。戦後、高度成長期を経て経済大国となった時の成功体験から抜け出せないまま、今までのやり方でしのごうと考える人が多い。

パルミサーノ氏の指摘するとおり、今までのやり方で嵐を生き延びようとしても勝者にはなれない。辻野氏は続ける。「途上国でデジタル技術が一気に普及する『リープフロッグ(カエル跳び)現象』とは逆の『ゆでガエル的衰退』が日本で起きています」

スイスに拠点を置くビジネススクール国際経営開発研究所(IMD)が発表した世界デジタル競争力ランキング2023で、日本は64カ国中32位。アジアの主要国がベストテン入りしているのに比べると、日本の「ゆでガエル的衰退」が浮彫りになる。

<世界デジタル競争力ランキング2023>

1 米国 7 スエーデン 2 オランダ 8 フィンランド 3 シンガポール 9 台湾 4 デンマーク 10 香港 5 スイス 6 韓国 32 日本

注:太字はフェアユース導入国 出所:World Digital Competitiveness Ranking

ちなみにアジアの4カ国・地域は、「国破れて著作権法あり~誰がWinnyと日本の未来を葬ったのか」 第7章「日本版フェアユース導入によりイノベーションを創出する」で紹介したとおり、ランキング1位の米国が発祥の地であるフェアユース導入国だ。確かに著作権法に公正な利用であれば、著作権者の許諾なしに著作物の利用を認めるフェアユース規定があればルールは変えやすい。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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