東京工業大学が女子学生比率の加速的な上昇を目的に2024年度の学部入試から「女子枠」を設ける。
同大では一般選抜のほかに総合型(AO)・学校推薦型(推薦入試)による選抜を行っているが、この総合/学校推薦選抜を「一般枠」と「女子枠」に分け、24年度の募集人員を一般枠118、女子枠58に、25年度以降はそれぞれ84、143にする。女子枠出願者は一般枠と併願ができ、両方合格した場合には女子枠にカウントされる(東京工業大学、2022年11月10日)。
公平性とは、受験の機会が平等に担保されることであり、前回の投稿で述べたように米国の積極的差別是正措置において憲法訴訟になった問題である。連邦最高裁判所は、人種枠のような目標数値の設定は平等原則に反するとの見解を示した。
実は日本でも、女性議員の速やかな増加を目的に多くの国が実施する女性候補者クオータの導入が議論された際、反対派の主要な論点が憲法14条「法の下の平等」違反であった。選挙候補者の一定比率を女性に配分するのは女性以外の人の立候補の機会を奪うというのである。
女性候補者クオータが果たして日本国憲法に抵触するのか。残念ながら、辻村みよ子東北大学名誉教授を除いて、この問題を憲法学者が正面から議論し、検証した形跡はない。ジェンダー法学の権威の辻村氏は、平等を法律上(de jure)と事実上(de facto)に区別する。前者が文字通り法による保障であるのに対し、後者はその法の運用によって受益者が実際に受け取る果実である。